innocence/guilty
□第4章
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なんだかフワフワする。自分が寝ていると言うことは分かるのだけど、起きようとしても一向に目を開けることができない。
どうしてこうなったんだっけ? あぁそうだ、イヅキの忠告も聞かないで飛び出したら、突然ダレかに連れ去られ、突然眠くなってしまって……。
ここはどこだろう、なんだか柔らかいベッドに寝かされているみたいだけど。
そんなコトを考えていると、ふとダレかが傍に寄ってくるような気配を感じた。その人はゆっくりとボクの腕を取ると、何か細工をしているみたいに作業を始める。
「おかえりティア、ようやく君は戻ってきたんだね」
どこか聞き覚えのあるその声に、ようやく目をあける。そこには黒く長い髪が特徴的な、20歳くらいのお兄さんがジッとこちらを見つめていた。
「ダレ……?」
どこかで見たことがあるような顔だ。いや、むしろ毎日顔を合わせているような――
「!」
ハッと気がついたボクは、とっさに柔らかいベッドから跳ね起きる。
そうだ、少し成長はしているけど、この顔はボクととても良く似ている。そんなものを持つのは
「ディア……」
名前を呼ばれたその人はクスクスと笑うと、ゆっくりとイスに腰掛けた。
「よく分かったね、目くらましの魔術で見た目を成長させているのに」
「ここはどこ? それにその姿は――」
そこは白で統一された部屋のようで、家具の一つ一つがとても高そうな一級品ばかりだった。
立ち上がったディアは淡々と話しながらカーテンに手をかける。
「僕が大人の姿になっているのは少し理由があってね。これをごらん」
一気に布を引くと、窓からたくさんの光が差し込み目がくらんだ。ようやく目がなれて飛び込んできた景色にボクは圧倒される。
ルアンの町並みが一望できるとても見晴らしの良い光景がそこにはあった。ここはお城の、それもかなり高い位置にある一室だったのだ。こんな贅沢な部屋を自由に使えるこの人は、いったい。
「16の少年じゃ威厳が感じられないだろう? 国王としてさ」
「王、さま?」
信じられない事実に、ボクはただ口をポカンとあけてしまう。そんな様子を面白そうに見ていた彼は、タネ明かしをするように語りだした。
「改めて自己紹介をしようか、僕はディアロ・ルオ・ルミナス。このルミナス国を治める王だ。そして」
うやうやしくこちらの手を取ったディアロ王は、ニコッと笑ってボクの正体を告げた。
「君の本当の名前はティアラ・エル・ルミナス。この国の王女なんだよ」
「おい、ロリコンオヤジ」
「ガァ〜すぅっ……ゴガッ! スピッスピッ」
反応がないことを確認したオレは、腰からスラリと剣を抜き、そのままイスに座り大イビキをかいているノザめがけて振り下ろす。
シュッ ぞりっ
不吉な音をたてて、ひげが左半分だけ剃り落される。やっぱ研ぎたてはキレが違うな。
「起きろ」
「すぷ…… ん? ぎえッ!?」
さすがの奇襲大好オヤジも、自分が襲われることには慣れていないのか慌てて飛び起きる。まぁ、誰だって寝起きに剣を突きつけられれば飛び起きるか。
「おいおいおい、なんだよお前か。ビックリさせるなよ」
殺気はないと判断したのか、剣を避けながら立ち上がったクマ男は伸びを一つすると怪訝そうな顔でたずねて来た。
「んで、何か用か? 金は貸さないぞ」
「たとえ金に困ってもアンタからは借りない。頼みたいことがある、城の内部に詳しい知り合いはいないか?」
その問いかけに、ノザは玉子でも丸ごと呑み込んだような顔をしてポツリといった。
「城に行っても金は手に入らないぞ……?」
「だから金じゃねぇっての! いいから紹介しろ、誰か居ないのか」
ぼりぼりと頭をかいていたハゲは、しばらくしてそのツルツル頭をポンと一つ叩いた。
「呑み仲間の娘が、明日から城のメイドになるとか言ってたな」
「よし、それで良い。それから、アンタにも頼みたい事があるんだ」
「何だ、面白い事かっ!?」
急に眼を輝かせるノザ、このトラブル大好き人間め……いや、今回ばかりはその性格に感謝すべきか。
「ここんとこヒマでよぉ、で?」
「あぁ、とびきり面白い仕事だ。街がひっくり返るくらいの……な」