Get to You -Part4- 【嵐 櫻井翔】 

□焦る
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イタリアの映画だった。

あの小さな男の子、トトが。

大人になって。

最後に見せてもらう、ツギハギの映像。

すごく、気の利いたラスト…。

「うわぁ…、本当に良かったね。」

館内に明かりが灯って。

見終わったばかりで、うまく表現できない感動を。

隣に座る翔ちゃんに、どうやって伝えればいいのだろう。

「うん。良かった…。ずっと、見るといいって言われてたんだ。」

翔ちゃんも、まだ映画の世界から完全には戻って来られないらしい。

視線が、スクリーンから戻って来ない。

「音楽も、良かったよね。」

「うん。さすが名作。色んなとこで、使われてるよな。今でも。」

映画の中で流れていた音楽は。

どれも耳に覚えのある旋律。

これも、この映画のBGMだったんだ…と何度も思った。


「今日は、ちゃんと映画見たね。」

からかう。

「この間も、一本見たじゃん。」

反論される。

「一本だけね…。」

ゴールデンウィークで帰省してきた翔ちゃんが。

見つけた古い映画館。

雰囲気も、入れ替え制がないのも。

気に入って。

今日は、翔ちゃんが前から見たかったという映画が、上映されるということで。

また、連れてきてもらった。


「次は、何をやるの?」

「うん?鉄道員…。だって。」

上映スケジュールの印刷された、小さなチラシを見ながら答えてくれる。

「てつどういん?」

「そ…。」

「健さんが、でてるやつ?」

「は?」

「あと…広末。とかだっけ?」

あんまり、興味のあるジャンルじゃなかったから。

はっきりと覚えてないけれど。

何年か前に、そんなの…あったよね。

さっきの、映画の雰囲気とは、また随分落差のある渋い映画だなぁ。

「ちが…うよ。」

呆れているのか。

笑えてしまうのか。

なんだか、微妙な顔をして、見られる。

「あれは、『ぽっぽや』って読むんだろ?」

「あぁ、そう、それそれ。え…?違うの?」

「イタリア映画の、鉄道員。1956年だって。モノクロだな。」

チラシの簡単な解説を、読んで教えてくれた。

「そっか…。見て行くの?」

「俺、その次のも観たいから。ここに居ていい?」

少し上目がちに、聞いてくれる。


ここでも…どこでも…。

翔ちゃんといられるなら。

もう、本当にどこだって…いいんだよ。
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