夢が壊れてしまう前に

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『すみません!お待たせしました』

「じゃあ、行こうか」



三人並んで歩き出す。買い出しに行く場所は今居る場所からそんなに遠くないらしい。歩く中、総司さんがぽつりと呟いた。



「土方さんも素直じゃないなぁ」

「えっ?」

「買い出しとか言ってさ、まだ慣れない君達二人の為に息抜きをしてこいって意味なんだよ」

「あの土方さんが?」

「いつも眉間に皺寄せて恐そうに見えるけど、あー見えて意外と優しい所あるんだ。直接言えない所が土方さんらしいよね」

「土方さん…」

「そういう事で好きな物買っていいからね」



土方さんに預かったお金を見せウィンクをしながら悪戯っ子の様に笑う。その袋には沢山入っているようだ。



『でもいいんですか?俺なんてまだ来て浅いのに…』

「光星君には必要な物揃えろって土方さんから。その分きっちり働いて貰うってさ」

『うっ…土方さん。そう来ましたか』

「ふふふ」

「でもこの事は土方さんには内緒ね」

『はい!』



土方さんありがとうございます!土方さん、本当は優しい方だったんですね。では今回はお言葉に甘えちゃいます。でも必要な物しか買わないのでご安心を。心の中で感謝をする。


細い道を抜けるとそこには賑やかな町並みや行き交う人々が沢山いた。



『うわー!本当に侍がいる。凄いですね!総司さん、総司さん!あれは何ですか?』

「光星君、色々見れて良かったね」

「秋月さんってお侍様を見るの初めてなんですか?」

『(ギクッ)あっ…』

「光星君は今まで凄い田舎に住んでいたから、こうやって間近で見るのは余りなかったみたいだね」

「なるほど。見れて良かったねですね」

『はい…。それはもう』



………あっぶねぇ。

千鶴さんは俺が元々こっちの人間だって思ってるんだし下手な事は言えないんだった。総司さん!ナイスフォロー。俺一人だったら完全にアウトだっただろう。

あっ、千鶴さんって呼んでいるのは千鶴さんに名前で呼んで下さいと言われたからだ。

千鶴さんは何も疑う事もなく話を続けていく。内心ボロが出ないか冷や汗だらけだった。



『総司さん…!ありがとうございます』

「千鶴ちゃんがちょっと天然で良かったね」



千鶴さんが店を見ている隙に聞こえないように話をする。総司さんには幾度となく助け舟を出して貰った。もうこの人の存在自体が輝いて見えて仕方ない。彼は俺にとって神様に見えた。




***




それから俺の生活用品や着物、土方さんに頼まれた物を三人で店中を回り無事買い物は終了。気が付けば日が傾き、辺りは夕暮れに包まれている。そんな中俺達は一段落したので甘味処で休憩をしていた。



『美味いですね!この団子』

「このお団子美味しいって有名なんですよ」

「土方さんもここの団子気に入ってて、帰りに買って来いって言われた位だからね」

「土方さんって甘いの好きなんですね」

『なんか意外だなぁ』

「やっぱりそう思う?」

『「はい!」』

「ぷっ!二人共正直者だね」



三人で笑い合った。この感じ好きだな。落ち着くっていうか安心する。



「…千鶴ちゃん」

「なんでしょうか?」

「今日も綱道さんの手掛かりは無かったね」

「…!」

「あーあ。綱道さんどこ行っちゃたんだろうね?」

「私諦めません。父はどこかに居るって信じてますから」



ん?んん?なんの話だ?

黙って二人の話を聞いていたが、誰の話をしているのか気になってしょうがない。俺は思い切って千鶴さんに聞いてみた。



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