最遊記
□そこにいるという証
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眼を開けると隣には三蔵の寝顔。
寝てても女子顔負けのその綺麗な顔は健在だ。
「(こうやって見るとやっぱり睫毛長いな・・・)」
私は三蔵が起きない程度に優しく髪を撫でてみた。
窓からさす月の光が三蔵の髪に反射してとても眩しい。
「(ああ、お師匠様みたい・・・)」
かつて私たちを拾い、育ててくれたとても優しく、月の光にも似た私たちのお師匠様の顔が浮かんだ。
「好きだよ、三蔵」
普段は口にできない言葉。
愛しくて愛しくて堪らない。
「好きだから、私の前からいなくならないでね?」
大切な人が目の前からいなくなる。もうあんな思いはしたくないから。
「三、蔵・・・」
その時、微かに三蔵の睫毛が揺れた。それと同時に眉間に少しの皺が刻まれた。多分起きてしまったんだろう。
普段だったら文句の一つ言ってくるところだが、その代わりにギュッと抱き締めてくれた。どうやら聞かなかったふりっをしてくれるらしい。
「・・・へへ。ありがとう、三蔵」
大丈夫。三蔵はいなくならない。
この温もりが何よりもその証拠。
私は瞼を閉じ、夢の中へ落ちていった。
煙草の匂い。全身から伝わる温もり。窓からさす月光。それが此処にいる証。