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□HTF
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毎日が死にたいの繰り返しだった。死にたい、死にたい、死にたい。
頭の中はそればっかで、でも痛いのも怖いのも大嫌いなわけで。
世界で一番の臆病者。周りの皆はそんな僕を笑った。そんなの無理だって。
でも、僕は構わないよ。だって、自分でも呆れるくらいの臆病者で泣き虫で弱虫なんだもの。

そう言った情けない僕の話を、彼はなにも言わずにただ静かに聞いてくれていた。
なんで、こんな情けない話を彼に言ってしまったのだろう。と、後になって少し
後悔をする。顔が熱くなるのが分かった。
でも、そんなことを言って僕はどこかで、彼の言葉を期待しているのも真実だ。
励ましてもらいたいの?大丈夫だよって言ってほしいの?正直、僕にも分からない。
なにを言ってもらいたいのか。でも、確かに僕は彼の言葉に期待をしていて、彼がなにか言ってくれたら、
なにかが変わるんじゃないかって、淡い期待をしているんだ。本当に、情けないなあ。駄目だなあ。

「…眠ったように消えてしまいたいなあ。…都合がよすぎるよね」

ははは、と、笑ってみせるが、うまく笑えなかった。顔が引き攣っているのが自分でも分かった。
それでも彼は、頷きながら、黙って僕のいうことを聞いてくれている。なんだか彼のそんな優しい
ところに涙がでてきそうになって、そんな彼の優しさに甘えてしまっていることに申し訳ない
気持ちでいっぱいになった。

「フレイキーは…」

彼は、僕が話しだしてから初めて口を開いた。なにを言われるのだろうかと心配になってきて
おろおろと挙動不審になる。

「もし、仮にフレイキーが死んでしまって、その後に悲しむ人達の気持ちを考えたことがある?」

「…悲しむ人なんて、いるのかな」

彼の質問に、僕は俯き加減にそう答える。なんだか彼の顔を見ることができなかった。

「俺は、少なくともすっごく悲しい。だって、フレイキーは俺にとって、とっても大切な存在だもの」

彼は両手で僕の頬を掴むと、無理やり顔を上げさせられた。僕の視界に彼の顔が入ってきて、目を合わさずには
いられない状態になってしまった。僕は目を泳がす。顔に熱が一気に集まるのを感じた。

「フレイキー、俺を見て」

そう言った彼は驚くことに泣いていた。僕はぎょっとして、口を金魚のようにぱくぱくとさせる。

「今、俺はとっても悲しいんだ。フレイキーがそんな悲しいことを思っていたら、俺はとっても悲しいし
フレイキーに死にたいなんて思ってほしくない」

彼の大きな緑の瞳から、ぼろぼろと涙が落ちていく。しかし、次第に彼の顔が歪み始め、世界はすぐに
滲んでしまった。僕の瞳からも、涙がどんどん落ちていく。まるで、伝染されてしまったのかのように
二人でたくさん泣いた。泣いて、泣いて、身体の水分がなくなってしまうんじゃないかと思うくらい
声を荒げて泣いた。彼も、声をあげて泣いていた。

随分と二人で泣いて、ようやくしゃっくりもおさまり落ち着いたころには
僕の中で、鉛のように付きまとっていたものが、洗い流されたかのように少し楽になった。

それでも、やっぱり不安はある。でもね、ゆっくりでいいから、変わっていきたい。
少しでも強くなって、生きたいと心から言える様ように。そう、本気で思えたんだ。

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