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□HTF
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だからね、もう一度言うけれど、君と俺は一緒にいちゃいけないと思うんだ。
なんでって?本当は分かっているくせに。ほら、その涙が証拠さ。
でも、君のことが嫌いになった訳じゃあないことだけは分かってほしい。
もう泣かないで。もうそろそろ行かなくちゃ。君を傷つけてしまう前に。
さようなら、永遠に。




一瞬、なにを言われたのか分からなかった。
考える前に涙がぼろぼろとでてきた。視界が滲んで、彼の顔がぼやける。
手で涙を拭っても拭っても涙はでてくる。これは悪夢なのだろうか。
でも、いっそのこと悪夢だったらいい。これが夢だったら…。

「…なんで、そんなこと、言うの…」


やっとのことで出た言葉は、答えが分かりきった質問だった。
彼がそんなことを言う理由は、あれしかない。僕だって覚悟はしていたつもり
だったんだ。いつか、こんな日がきてしまうのだろうことを。でも、怖かったんだ。
ぼやけた彼の表情はよく分からないけれど、辛そうに、無理に笑っているように見えた。


「行かないで…」

咄嗟にでた言葉に、彼は無言で横に首を振った。また、涙がでた。
そうして彼が立ちあがる。僕も急いで立ち上がる。「行かないで」なんて、なんて残酷なことを言ってしまったんだろう。

彼の背中がゆっくりと遠ざかる。僕はただ立ち尽くして、彼を見送ることしかできない。
彼の背中が小さくなっていく。僕から消えていく。






彼が最後に言った別れの言葉。「またね」と言った昨日の笑顔が恋しいよ。
「さようなら」なんて、言ってほしくなかった。

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