book*akb 2
□わからずや
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「つらくない恋なんか恋じゃねぇんだよ」なぁんて、後輩にはえらそうに言っている優子だけれど、自分のこととなると極端に不器用である。
あなたはそういう人だ。
「麻里ちゃん、‥陽菜、他に好きな人がいるのかな‥」
楽屋の机に突っ伏したまま本日何度目かの科白を吐いてため息をつく優子の視線が一体どこをとらえているのか、わたしにはよくわからない。
「何でそう思うの?」
「はぁ、それ、聞いちゃう?」
突っ伏していた身体を起こして頬杖をつき、たっぷりセンチメンタルに浸りながら哀愁を放つ今の優子に、先輩の威厳は皆無である。
「最近話してても上の空だし、‥なんか態度が冷たい」
「いや‥それはいつもじゃなくて?」
陽菜が誰にでもクールなのは、周知の事実である。今になって殊更に気にすることではないのに。
「でもそれだけじゃないし‥デート誘っても断られた‥全然ちゅうしてくれない。絶対ほかに好きな人できたんだ‥」
「いや、それはどうかわかんないけど‥考えすぎでしょ」
ポジティブすぎるくらいの優子がこうも悲観的になるのは、恋人の陽菜が絡むときだけである。
二人の恋をずっと見守ってきたわたしだから言えることだけれど、こいつらはほんとうに、人騒がせなカップルなのだ。
「うん、でも‥あんまりゆっぴーが悲しむの、見たくないんだよな」
「ん、ありがと‥」