book*akb 2
□予想以上の展開
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14のとき、ダチにもらったマルボロを一本ふかしてからは早かった。
成績は落ちぶれ、人にはやたらとガンをくれるようになり、喧嘩に明け暮れ、無免許でバイクを飛ばし、欲しくもないものを盗ったりした。何かにつけて大人が気に入らなかったりもした。
両親の離婚のことが原因だったのかもしれない。正直、愛なんてものはバカにしていた。
だから、今自分のなかにある、おそらく恋心である感情にひどく眩暈がしている。なんども消し去ろうとした。でも、無理だった。
好きになるつもりで近づいたわけではなかったのに。
「なぁ、シブヤよぉ。おめぇはなんでまた、こんなにケガばっかすんだよ」
「すいません、優子さん」
「いいけどよー」
「あ、あの、もう歩けるんで‥降ろしてもらっても」
そうなのだ、先程からわたしはあなたにおぶわれている。
理由は簡単、喧嘩ゆえの負傷だ。
「はぁ?跳び蹴りしてよけられて、コンクリにおもいっきし足ぶつけて捻挫したやつが何ほざいてんだよっ」
よっ、のときに、あなたは一度立ち止まってわたしを背負いなおした。振動が伝わってくる。
あなたは背が低いくせに力持ちだ。以前怪我したときも、軽々と「お姫さまだっこ」なるものをされたことがある。
「‥すいません」
「ったく、無茶すんなって何度も言ってるだろ」
「いや、だって」
「あ?」
「無茶でもしないと、守れないじゃないですか。‥‥優子さんを」
少し照れくさかったのを我慢して言った。恥ずかしくて語尾が小さくなってしまった。
「あっはははは」
「なんで笑うんすか‥」
「ははっ、バカヤロ。おめぇに守られるほど弱くなっちゃいねぇんだよ」
あなたはけらけら笑いながら答えた。
「‥それはそうっすけど」
「でもありがとなー、シブヤ」
今度はとびきり優しそうに言った。胸があつくなる。おまけに頬まであつくなった。
こんなにも密着しているのだからきっと、心臓のどきどきも伝わってしまっているのだろう。
それでもいい、それでもいいから1秒でもいいから長く、こうしてくっついていたかった。
重症だ、ほんとに‥。