book*akb 2

□消毒液より強力な
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「ったくよぉ、なんで独りで乗り込むかなぁ」


「‥すいません、優子さん」


ガーゼでやや乱暴に口元を拭かれ、鈍く痛みが走る。


「い、てっ‥」


「我慢しやがれ、バカヤロウ」


「‥すいません」


痛そうに顔をしかめたわたしを見て、あなたはやれやれ、と笑った。

実によく表情を変える人だと思う。また、わたしとは全く正反対の人だとも思った。


だから惹かれたのかもしれない。




年中喧嘩づくしのラッパッパの部室には、以前部費で用意した少し大袈裟な救急箱がある。

この度ヤバクネの偉方に独りで喧嘩をふっかけたわたしは、辛勝したもののちょっと深刻なくらい、トリゴヤが焦って駆け寄ってくるくらいの怪我を負って帰還した。案の定サドさんにはきつめに叱られた。

そんなサドさんはトリゴヤと学内の喧嘩の仲介へ行ってしまったので、部室には今、部長とわたしだけが残っている。

悪いからいいと断ったのに、優子さんは例の救急箱を引っ張り出してきて、馴れた手つきで脱脂綿をエタノールに浸し始めたのだ。
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