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□白衣とセーラー服 2
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†陽菜side
卒業式のあとの光景は、きらいじゃない。
卒業証書を片手に、生徒たちは、それぞれが帰路につく途中であらゆるドラマを生み出すからだ。
例えば第二ボタンとかね。
恐ろしくベタだけれども。
この学校は女子高だから第二ボタンっていうのはないけれど、憧れの先輩からタイをもらうとか、校章をもらうとか、なんかいろいろと風習はあるらしい。
保健室の窓から校庭を眺めていると、友達と帰ろうとするあなたを見つけた。
偶然ではない。同じセーラー服だらけの中から、もともとあまり良くない目をフル活用して見つけ出したのだ。
ほめてほしいくらいである。
少し大きな声を出した。
「お〜い、大島」
すでにある決心が、わたしのなかで固まっていた。
「ん?」
声に気がついてきょろきょろするあなた。
その様子が、はじめて巣の外に出た小鳥みたいで笑えた。
「ここだよ、お〜い、大島」
わたしを見つけ出したあなたは、昨日のことを思い出したのか一瞬気まずそうな顔をして、それでも窓の下まで駆け寄ってきてくれた。
「『お〜い、お茶』みたいに呼ぶなよ。しかも二回もさ」
「先行ってて」と友達を校門の方へ促したあなたは、歩きながら的確なツッコミを入れてきた。
桜が新風にひらひらと舞っている。今年は一段と美しい。
「卒業、おめでとう」
「うん‥ありがと」
あなたは少し目を伏せてこたえる。
「ちょっと来て、保健室まで」
わたしはあなたを手招きした。