book*akb

□白衣とセーラー服 2
1ページ/2ページ

†陽菜side

卒業式のあとの光景は、きらいじゃない。

卒業証書を片手に、生徒たちは、それぞれが帰路につく途中であらゆるドラマを生み出すからだ。

例えば第二ボタンとかね。
恐ろしくベタだけれども。


この学校は女子高だから第二ボタンっていうのはないけれど、憧れの先輩からタイをもらうとか、校章をもらうとか、なんかいろいろと風習はあるらしい。



保健室の窓から校庭を眺めていると、友達と帰ろうとするあなたを見つけた。

偶然ではない。同じセーラー服だらけの中から、もともとあまり良くない目をフル活用して見つけ出したのだ。

ほめてほしいくらいである。


少し大きな声を出した。


「お〜い、大島」

すでにある決心が、わたしのなかで固まっていた。


「ん?」

声に気がついてきょろきょろするあなた。
その様子が、はじめて巣の外に出た小鳥みたいで笑えた。

「ここだよ、お〜い、大島」

わたしを見つけ出したあなたは、昨日のことを思い出したのか一瞬気まずそうな顔をして、それでも窓の下まで駆け寄ってきてくれた。



「『お〜い、お茶』みたいに呼ぶなよ。しかも二回もさ」

「先行ってて」と友達を校門の方へ促したあなたは、歩きながら的確なツッコミを入れてきた。


桜が新風にひらひらと舞っている。今年は一段と美しい。


「卒業、おめでとう」

「うん‥ありがと」


あなたは少し目を伏せてこたえる。

「ちょっと来て、保健室まで」

わたしはあなたを手招きした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ