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□白衣とセーラー服 1
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†優子side
高校に入学してから三度目の春が、とうとう来てしまった。
実に億劫だ。
今年は桜も鬱陶しく感じる。
春は出会いの季節と言うけれど、本当は別れの季節でもあるのだ。
あなたとの別れも、すぐそこまでやって来ている。
実に、実に億劫だ。
「先生、愛してる」
保健室のスライド式のドアを開けてわたしがそう言うと、白衣に身を包んだあなたはいつも、呆れたように腕を組むのだった。
「‥‥大島、またそればっかり。人の顔みりゃ愛しているってあなたそれ、何回目なわけ」
いや、ちょっと何回目かは忘れたけれども。
「だって、ほんとに好きなんだもん。付き合ってください」
この言葉に偽りはない。
わたしはあなたのデスクの横にある小さな丸椅子に腰掛けた。
ここが専ら、定位置となっている。
「わかった、わかった。いつも言ってますがね、ここはあなたみたいに元気な子が来るところじゃないの。保健室なの」
薬品の入った茶色いビンの中身をチェックしているのであろうか、あなたがこちらに目を向けずに答えた。
「それは知っているけれどもさ」
またがった丸椅子をくるくる回しながら話を続けた。
「じゃあさっさと帰宅したまえ、高校生。あした、卒業式でしょう」
「そうだけれどもさ」
あなたは、比較的冷たいひとだ。
冷酷であるということではない。
流行りのツンデレなるものの、「ツン」の部分が絶えず出ている。とイメージすれば分かりやすい。
そんなあなたがたまに笑うのが見たくて
わたしはおどけるのだ。
「うっ、急に胸が苦しい!」
「うわ、うそくさいなぁ」
「うそじゃない!先生のこと好きすぎて、精神が病んだ」
「ばかだなぁ」と笑われる。この笑顔に、わたしは恋をしたのだ。
保健室の小嶋先生、あなたがわたしの初恋だった。