book*akb
□嫉妬の塩梅 前編
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†陽菜side
鈍感。
感覚が鈍いと書いて、鈍感。
あなたは、そんな人だ。
「いやぁ、あの二人はすごいよ。逸脱だね」
あぁ、そうですか。
「香里奈さんも吉高ちゃんもさ、かわいくてかわいくて」
そりゃあよかったこと。
「いやさ、ほんと仲良くしてもらっちゃってさ、あ、写メ見る?」
もういい。じゅうぶんだ。
それに、写メならもう、とっくにブログで見た。
ニヤニヤしちゃって。
ばかなんじゃないだろうか。
久しぶりに撮影で会えたというのに、これである。
何なのだろう。ずっとこの調子だ。
三日前からあなたに会えるのを楽しみにしていた自分が、恥ずかしくなる。
あなたこそ、「逸脱」な鈍感だとわたしは思った。
「そう、よかったじゃん」
目も合わせず短絡的に返事をして、楽屋を出た。
ほかの人にへらへら笑うあなたに嫌気がさす。
そして、それを許せない自分にも。
嫉妬?
まさか。これが?
‥そうか。
独占欲をはらんだ感情に、わたしはやっと気がつく。
「‥そっか、こんなに優ちゃんのこと、好きになってたんだね‥」
わざと声に出して言ってみたら、胸が余計にずきずきと痛むだけだった。