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□情緒不安定
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押し倒したわたしの上に覆い被さったあなたは、今にも涙を流しそうに唇を噛んでいた。
「‥ゆうちゃ‥?」
ぽつぽつと涙の雨がわたしの頬に降ってくる。ベッドのシーツにも、涙はとめどなく落ちている。
一瞬の困惑のあと、わたしはすべてを悟った。
というか、うすうす気がついていた。
あなたが抱えている不安、そして精神の疲労。
プレッシャーという名の巨大な岩が、ずしんとあなたにのしかかっていることを。
それから、それをほんとうに発散できるのは、わたしの前だけだということも。わたしだけが、あなたをなだめられるということもわかっていた。
ひっく、ひっくとしゃくりあげるあなたの頭をそおっと撫でる。
いつもよりも、うんと、そおっと。
わたしはあえて何も言わずに、涙を親指ですくって、そのまま頬を撫でた。
あなただって、ここで優しい言葉をかけてほしいわけではなかったはず。
あなたはそういう人だ。