歌書物
□通り雨
2ページ/2ページ
無理矢理笑みを作れば、そうかと三成は短く答え外を見る。
気が付けば雨は止んでいた。
「止んだな」
「えぇ……」
残念に思いながら握っていた手を緩めると、三成が力強く握りしめてきた。
「殿?」
「このまま……」
驚いて三成と握られている手を交互に見る。頬を紅くし、口を尖らせながら三成は言う。
「今日はこのままで、帰りたい……」
そんな三成の願いに左近は大きく頷いた。
「では、このまま帰りましょうか」
笑顔を向ければはにかみながら三成は小さく笑った。
今の自分には三成がいればそれでいい。
手を引けばちゃんとついてきてくれる三成を感じながら、左近はぽつりいと呟いた。
「殿、ずっと側にいますから」
あなたにはあたししかいないなんて
そんなことは到底言えないけれど
今のあたしにはあなたしかいらない
見えない気持ちを信じて言える
暖かい夏の始まりそうな
この木の下で結ぼう
手を引くあたしに
笑ってついてきてくれる
それが二人の形
aiko 「二人の形」