歌書物

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会話が途切れ、二人の時間が静かに流れる。

「そう言えば」

そんなときは決まって三成は左近の話をする。
三成のことならどんな事でも知りたい筈なのに、今はそれを遮る為に俺はタバコに火をつけた。








白い煙が揺めき、消えていく。
煙の向こう側で少し頬を染めながら話す三成には、俺が映っていない。その瞳には他の誰かがいる。
残り少ないバーボンとカシスソーダを見る。





これを飲み干したら、お前は左近の元へ帰るんだろうな……







ならば、このまま時間を忘れて過ごし、終電がなくなるまでこのようなバーに居ようか。そしたら三成は帰れない。
でもそんな独りよがりな考えを、三成はきっと嫌がるだろう。
チラリと三成を見れば、とろりとした瞳をしている。
もっと酔え、左近なんて忘れてしまえ。そんな醜い想いが込み上げてきて、俺は舌打ちした。

「俺は、今が幸せなのだよ」

三成がそう呟く。
もう俺にはどうすることも出来ない。
こいつを幸せにするのは俺じゃない。

「おら、酔っ払う前に帰るぞ」

「ふん、貴様に言われなくない。貴様も相当酔っているのではないか?」

「どっかの馬鹿のせいでな」

三成の肩に腕を回し、立たせる。
俺は左近が迎えにくるまでの限られた時間に酔いしれることにした。











鍵をかけて
終電を越えて
時間を止めて
平井堅 「even if 」
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