歌書物
□伝う
2ページ/2ページ
そのため誰かを愛することなどしたこともなかったし、されたくもない。そう思っていた。
でも、本当は一人が嫌でしかたなくて、誰かに自分を受け入れて欲しかった。
自分から行動せねば何も始まらないというのに、俺は甘えてばかりいた。
「おや、殿が出歩くなんて珍しい」
気がつけば向かいから左近が近づいて来ていた。
どくん、と鼓動が大きく脈打つ。
途端に震える手を必死で隠す。きっと俺は今、情けない顔をしているだろう。
でも、言わなければならない。たとえそれがどんな結果であっても。俺の願うものでなかったとしても、伝えるのだ。
「とーの?」
「さ、左近!!」
俺は声を上擦らせながら言った。
『俺はお前が、左近が好きだ』
愛されたいでも愛そうとしない
その繰り返しの中をさ迷って
僕が見つけた答えは一つ
怖くたって傷付いたって
好きな人には好きって伝えるんだ
AquaTimez 「千の夜をこえて」