ガンダムSEED・DESTINY

□本当の想い
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 間違っていると言ったキラの顔を思い出しながら、フレイはベッドに身体を倒した。

 彼は何を思って、その言葉を発したのだろう。

 あの時はそれを考えるだけで、怒りを感じていた。

 けれども今は違う。何が間違っていたのかをはっきりと頭に描くことが出来る。


 キラと離れてから、ずっとフレイは考えていた。

 あの頃の二人のことを――。


 もっときちんと触れあえれば、キラを救えていたかもしれない。

 微力、無力ながらも温かく受け止めていれば、キラはここまで泣かずに、苦しまずに済んだかもしれない。

 キラはずっと泣いていた。悲しくて、守れなくて、哀しくて、辛くて。

 ただの男の子だったはずの彼はいつしか、ただの男の子では居られなくなって。

 そして何より、彼をどん底へと突き落としたのは自分自身だった。


「キラ……」


 フレイは傷付きやすい少年の名前を小さく呟くと、ベッドの上に寝転がったまま、静かに膝を抱えた。

 ドミニオンという戦艦はアークエンジェルによく似ているので、ザフトの戦艦に居た時よりは心が落ち着く。

 それでもここは彼の温もりもない、ただの戦艦だが――。


 今でも目を閉じると、キラがくれた温もりや言葉が身体を優しく抱きしめる。

 どんなに消そうと思っても消えなくて、だからこそ、彼は本当の優しさをくれていたのだとフレイは思う。

 少し前まではキラのことを考えると、ただ胸が痛くて、どうしようもなかった。

 けれど今は違う――優しさに満ち溢れている。


 これがきっと人々がいう『愛』と言うものなのだろう。

 今になって初めてフレイはその意味を知った。

 まだあの頃の二人には難しかったのだ。

 キラはキラで切羽詰まっていたし、フレイはフレイで彼らより一つ下でまだ幼かった。

 いや、でも当然なのだ。彼女達は生まれてからまだ十五、六年しか生きていないのだから。


 けれど今ははっきりと分かる。

 『愛』の意味も、『本当の哀しみ』の意味も――。


 だからこそ、伝えにいかなくてはならない。

 もう大丈夫なのだと――、もう自由でいいのだと――。


 危険な戦場でもかまわない。たとえ、それで命を落とすことになっても。

 自分は伝えにいく。

 彼は危険を承知の上で、命をかけて戦場へと出てくれた。

 今度はそれに自分が答える。


「……キラ」


 今までよりも温かくフレイは彼の名前を呼んだ。

 そして今は側に居ないキラを想い、ふと微笑みを送った――。
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