ガンダムSEED・DESTINY

□ゴールはどこ?
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 戦争が終わり、季節は移り変わって、シンにも後輩が出来ていた――。


 シンはザフト軍にその身を置きながらも、新たに小さな家を購入した。

 購入した家は本当に小さなもので、ヴィーノにもっと大きな家を買えよと、つっこまれ、家族が出来たら、どうすんの?と、ニヤニヤとした顔つきをしながらヨウランにも突っ込まれた。


 でも今のシン達にとってはこのサイズが一番ベストだった、あまりに大きな家は一緒に住むステラが恐がるだろうから――。

 どの部屋に居ても、ステラが『シン』とその名を呼べば、すぐに聞こえるように、いつでも駆けつけられるように。


 まあもし大きい家がほしくなったら、増築すればいいだけだ。今はこれでなんの不便もない。

 もし不便を上げるなら、ザフト軍の基地からここは少々離れていて、毎日帰ることが不可となっていることくらいだ。

 まあ軍人である以上、そんな頻繁に帰ることは不可能に近いが……。


 出来れば毎日ステラの側にいたいのだが、それは出来ない。働かなければステラを養うことはできない。

 だからシンは軍人として、そのままザフトに残ったのだ。


 一方、ステラは薬が染み付いた身体に、中和剤を投与しながら過ごしている。

 だからシンが家に居ない時は、その医者がステラの面倒を見てくれている。

 議長・ラクスの計らいで、これに関することは国が責任を持つと豪語してくれたので、安心して預けられた。


 それでもシンがステラを心配するのは変わりがないが――。



 そんなことを頭の片隅におきながら、シンは数週間前に入ってきた新人の戦闘シミュレーションを見つめていた。

 それは呆れるほど連携が全く取れていない情景。シンは溜息を吐くと、新人の元へと足を運んだ。

 そして彼らがシンの前につくなり、口をきる。


「お前ら昨日も言っただろっ! 力押しでクリアすれば良いってもんじゃないって」


 シンの荒っぽい言い様に、新人兵士はビクリと身体を震わせる。


 新人兵士の間では、ジュール隊配属は避けたいとアカデミーの頃は噂になっていたが、今ではヤマト隊の先輩・シン・アスカは避けた方がいいと言われている。


 それほど新人にシンは恐れられていた。


 新人兵士はシンの怒り声を聞くなり、深く頭を下げる。その行動にシンはまたムッとした。

 最近の彼らは頭を下げれば良いと思っている、その顔は不本意そうな表情をしているくせに――。


 頭を下げたまま、上げようとしない後輩に、シンは再び溜息を吐き、彼らに言いかける。


「オマエ達は赤服だろ。力を持つ者ならそれを自覚しろよ! 自分の持つ力を正しい方向に生かす。功績だけを上げようなんて考えてたら、大事な人達が守れない。

そもそも戦争は功績じゃない。何が正しいかを自分で考えて戦う。

それが出来て、初めて力は本当の力になる」


 この新人達は何度言えば、それが分かるのだろう。

 そう思いつつ、シンがまた一つ溜め息を吐く。するとそれとほぼ同時に、人の腕がシンの首に絡んだ。


 勢いよく飛び付いたのはヨウラン。その横にはヴィーノの姿もある。

今は指導中だというのに、邪魔をするとは何事か。シンはよろけそうになった身体を整え、二人を睨み付けた。


 しかしヨウランはそれを気にもせず、新人兵士に言葉を放つ。


「悪いけど、説教はまた後でな。ちょっとコイツ、借りてくから」


 それだけを言うと、ヨウランとヴィーノは早々とシンの腕を取って、踵を返した。

 しばらく歩き、新人兵士達が見えなくなると、シンは勢いよく二人の手を振り払う。


「なんだよ、急に……!」


 怒り眼のシンに対して、ヨウランがいつものおどけた様子で話し始めた。


「最近、奥さんとはどーですか! まさかケンカ気味ですか、いーや、それはないですかー?」


 ニヤニヤとして言ってくる台詞に、シンはまたムッとしてヨウランを睨む。

 すると横に居たヴィーノがすかさずフォローを入れた。


「やめろよ、ヨウラン。シン、マジでキレるよ」


 ヴィーノがそう言うと、ヨウランは「はーい」と気だるげに笑った。

 彼らは一体、何なのだ?

 シンが怒りを胸に抱きつつも、そう思っていると、ヴィーノが落ち着いた様子でシンの前を進む。
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