ガンダムSEED・DESTINY
□ゴールはどこ?
1ページ/7ページ
戦争が終わり、季節は移り変わって、シンにも後輩が出来ていた――。
シンはザフト軍にその身を置きながらも、新たに小さな家を購入した。
購入した家は本当に小さなもので、ヴィーノにもっと大きな家を買えよと、つっこまれ、家族が出来たら、どうすんの?と、ニヤニヤとした顔つきをしながらヨウランにも突っ込まれた。
でも今のシン達にとってはこのサイズが一番ベストだった、あまりに大きな家は一緒に住むステラが恐がるだろうから――。
どの部屋に居ても、ステラが『シン』とその名を呼べば、すぐに聞こえるように、いつでも駆けつけられるように。
まあもし大きい家がほしくなったら、増築すればいいだけだ。今はこれでなんの不便もない。
もし不便を上げるなら、ザフト軍の基地からここは少々離れていて、毎日帰ることが不可となっていることくらいだ。
まあ軍人である以上、そんな頻繁に帰ることは不可能に近いが……。
出来れば毎日ステラの側にいたいのだが、それは出来ない。働かなければステラを養うことはできない。
だからシンは軍人として、そのままザフトに残ったのだ。
一方、ステラは薬が染み付いた身体に、中和剤を投与しながら過ごしている。
だからシンが家に居ない時は、その医者がステラの面倒を見てくれている。
議長・ラクスの計らいで、これに関することは国が責任を持つと豪語してくれたので、安心して預けられた。
それでもシンがステラを心配するのは変わりがないが――。
そんなことを頭の片隅におきながら、シンは数週間前に入ってきた新人の戦闘シミュレーションを見つめていた。
それは呆れるほど連携が全く取れていない情景。シンは溜息を吐くと、新人の元へと足を運んだ。
そして彼らがシンの前につくなり、口をきる。
「お前ら昨日も言っただろっ! 力押しでクリアすれば良いってもんじゃないって」
シンの荒っぽい言い様に、新人兵士はビクリと身体を震わせる。
新人兵士の間では、ジュール隊配属は避けたいとアカデミーの頃は噂になっていたが、今ではヤマト隊の先輩・シン・アスカは避けた方がいいと言われている。
それほど新人にシンは恐れられていた。
新人兵士はシンの怒り声を聞くなり、深く頭を下げる。その行動にシンはまたムッとした。
最近の彼らは頭を下げれば良いと思っている、その顔は不本意そうな表情をしているくせに――。
頭を下げたまま、上げようとしない後輩に、シンは再び溜息を吐き、彼らに言いかける。
「オマエ達は赤服だろ。力を持つ者ならそれを自覚しろよ! 自分の持つ力を正しい方向に生かす。功績だけを上げようなんて考えてたら、大事な人達が守れない。
そもそも戦争は功績じゃない。何が正しいかを自分で考えて戦う。
それが出来て、初めて力は本当の力になる」
この新人達は何度言えば、それが分かるのだろう。
そう思いつつ、シンがまた一つ溜め息を吐く。するとそれとほぼ同時に、人の腕がシンの首に絡んだ。
勢いよく飛び付いたのはヨウラン。その横にはヴィーノの姿もある。
今は指導中だというのに、邪魔をするとは何事か。シンはよろけそうになった身体を整え、二人を睨み付けた。
しかしヨウランはそれを気にもせず、新人兵士に言葉を放つ。
「悪いけど、説教はまた後でな。ちょっとコイツ、借りてくから」
それだけを言うと、ヨウランとヴィーノは早々とシンの腕を取って、踵を返した。
しばらく歩き、新人兵士達が見えなくなると、シンは勢いよく二人の手を振り払う。
「なんだよ、急に……!」
怒り眼のシンに対して、ヨウランがいつものおどけた様子で話し始めた。
「最近、奥さんとはどーですか! まさかケンカ気味ですか、いーや、それはないですかー?」
ニヤニヤとして言ってくる台詞に、シンはまたムッとしてヨウランを睨む。
すると横に居たヴィーノがすかさずフォローを入れた。
「やめろよ、ヨウラン。シン、マジでキレるよ」
ヴィーノがそう言うと、ヨウランは「はーい」と気だるげに笑った。
彼らは一体、何なのだ?
シンが怒りを胸に抱きつつも、そう思っていると、ヴィーノが落ち着いた様子でシンの前を進む。