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「ねえ、どうしてわたしは白うさぎを追いかけるの?」

「アリスだからだよ。」

「え?」

「アリスだから」

「アリスじゃないしね、まず」

「アリスはアリスだよ。」

「なにそれ、」

「ねえチェシャ猫」


帽子屋はニヤニヤしながら振り向いた。するとチェシャ猫は頭から姿を現した。

「チェシャ猫!」

「アリス」

「もう、どこ行ってたの?」

チェシャ猫は何も言わず、わたしを帽子屋から拾い上げ自分の肩の上に乗せた。

「チェシャ猫さーん」

「なんだいアリス」

「答えなさい」

「さあアリス白うさぎを追いかけよう。」

「チェシャ猫はヤキモチ妬きだな。」


帽子屋はボソッと言った。


「チェシャ猫?」

「アリス」

「何?」

「今度からは猫の言うことをお聞き。
そうでないと、今度はどうなるかわからないよ。」

「…はい」

「よろしいアリス。」

「珍しくチェシャ猫が怒ってる」


帽子屋がケラケラ笑った。


「チェシャ猫ごめんね。」

「…」

チェシャ猫のフードの中の灰色の瞳はわたしを見つめた。
そしてチェシャ猫の指がわたしのほっぺたをつつく。
つんつんと。


「…」

「 …チェシャ猫?」


チェシャ猫はハッとしたように
白うさぎを追いかけようと言った。

「どうしたの?」

「……白うさぎを追いかけよう」


しばらくそれしか言わなかった。
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