ぎゃくせつ

□36、水切り
1ページ/6ページ



クリスマス休暇に入ってすぐ、二日間の外出許可をとることにした。
急いでユニコーンの血を入手しなければならなくなった為だ。
それにはロンドンのノクターン横丁に行くしかない。

ユニコーンの血は見た目にそぐわず、味もゲテモノである。
それでも“ゴーストにも満たない存在”には必要なのだ。

俺が一年生だった頃は、クィレルが禁じられた森で直に調達していた。
しかし彼はその年度の末に死んでしまった。
後任の俺には多大なる危険を冒せるほどの実力はない。

そこで闇ルートから購入することにした。
高価だが、帝王の元部下の隠し口座から支払っているため懐は痛まない。

予定としては、今日の最終汽車でロンドンに向かうつもりだ。
夕方までにホグズミード駅に行くことになる。


「名目上はマルフォイ家の食事会だ。実際に参加するから丸二日は帰れない」


そう告げると、ソファに座ったシリウスと目が合った。
彼は眉間にしわを寄せ渋面を作っている。
小首を傾げつつ隣に腰を下ろした。


「大丈夫、ちゃんと二日分の食料を用意して行く」


彼をこの部屋に繋ぐ鎖は長い。
外に出すことはできないが、不自由はないように配慮している。

食料も、パンや塩漬けがメインになってしまうが、大丈夫だろう。
ビーフジャーキーも残っていた筈だ。
水分はペットボトル数本と果物を用意しよう。

宥めるようにブラッシングしたばかりのシリウスの髪を梳いた。
しかし表情は益々苦くなる。


「そんな心配してない」
「はぁ……言いたいことは口で言え」


ただ睨みつけられているというのは苛々する。


「ヴォルデモートのためにそこまでするのか」
「まあ、そうだな」


歯切れの悪い返事に、シリウスの目は鋭さを増した。
彼の心中は察せられるが、どうしてやることもできない。

シリウスは可愛いと思う。
けれどその感情はどこか常軌を逸している。
それに、俺の一番は帝王だけなのだ。


「クリスマスだからな、お土産くらい買ってくる」


(相手に尽くす熱中派)

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ