ぎゃくせつ

□35、独楽
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その日、珍しくハーマイオニーが遅刻すれすれで教室に来た。
不機嫌なのか、鞄から筆記用具を取り出す所作が荒い。


「どうしたの?」


疑問を持たずにはいられない。
俺は帝王が面倒そうに止めるのを無視して尋ねた。
ハーマイオニーの羽根ペンが拉げた。


「スリザリンが!ああ、ブルーは違うけど……でも!」
「落ち着いて……スリザリンがどうしたの」
「土曜日のクィディッチの試合よ。対戦相手がハッフルパフに変わったの!」


初耳だ。
聞き返す間もなくハーマイオニーが続ける。


「マルフォイの腕がまだ治っていないって」
「なんだって?」


これはさすがに聞き返した。
どうしてスリザリン生の俺にその情報が入ってこない。
仮にも俺は元選手で、ドラコの友人なのに。

それに懸念もあった。
帝王や俺にとっては何の問題もないが、詳しく調査されたら面倒だ。

出血のわりになんの後遺症もでなかったドラコの怪我だが、彼の大事な一人息子だ。
ルシウスさんが事を大きくする可能性がある。
魔法省に訴えて、バックビークの首を刎ねるかもしれない。


「マダム・ポンフリーからは完治したって聞いたんだけど……」
「ええ、まだ治っていないなら聖マンゴに行くべきだわ。ただの嘘よ」


曰く、腕に包帯を巻いており、俺がいるときはローブの下に隠しているのだと。
そして俺がいないとなると大袈裟に痛がっているらしい。


「ごめん。本当に」


大方、最悪の天候での試合をしたくないのだろう。
試合がある土曜日が近づくにつれて天気は悪くなっていく。
風雨で荒れた空は俺だって嫌だ。

けれど、だからといって引き延しにしてどうする気なのだろう。
冬の試合も風雨の中での試合も、どっちもどっちだ。


「ブルーのせいじゃないわ……ただ、ちょっと目に余るから……」
「わかってるよ、注意しておく」


さすがに試合のマッチングをこれ以上変えることはできない。
せいぜいドラコやフリント、後はスネイプ教授に小言を言うくらいだ。
それでも抑止力にはなりえない。


『けれど、小言くらいは言ってやるのだろう』
頼まれましたし。
『本当にお前は馬鹿のように甘いな』


当たり前だ。
ハーマイオニーは友達なのだから。


(信頼される友情)

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