ぎゃくせつ

□34、手繋ぎ鬼
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「また明日ね」
「うん、おやすみ。……ちゃんと睡眠をとるんだよ」
「ブルーもよ。おやすみなさい」


俺とハーマイオニーはまた共に行動するようになった。
数占いやルーン学、そしてマグル学などはドラコもハリーたちもとっていない。
そのため、それらの授業への移動時間は二人ですごしている。

もちろんそれ以外はドラコたちと一緒だ。
以前よりも時間配分のバランスがとれている気がする。

十月になると、クィディッチ・シーズンが到来した。
図書室でハーマイオニーと協力して膨大な課題を終わらせるのにも慣れていた。
だから、気にならなかった。

自室のベッドの下には、かつてスネイプ教授に贈られた最高の相棒がある。
シルバー・アローという美しい箒だ。

ある晩、課題を終わらせてスリザリン寮に戻ると、掲示板の前に人だかりができていた。
去年もこの光景を見た気がするが、何が原因だったのかまでは覚えていない。
三年生以上の生徒に関係あることなのだろう。


「なんの騒ぎだい?」


近くにいた女子生徒に訊いてみた。
せっかくのこの顔の造りを活かさない手はない。


「えっと、第一回目のホグズミード週末だよ」
「ああ、三年生から外出許可が下りるんだったね」
「ちょうどハロウィーンの日みたい」
「ありがとう」


それだけ話して騒ぎの輪から外れた。
此処で突っ立っていてもなんの得にもならない。
どうせ俺は許可証にサインしてもらってないのだから。

早々に自室に戻り、椅子に座って魔法薬学の教科書を読み始めた。
その直後にドラコが入ってくる。


「クラッブとゴイルがいないな、珍しい。どうしたんだ」
「ああ、あ、いや」
「呂律が上手く回ってないぞ」


ハーマイオニーに接するときとは違う口調で笑いかけた。
どちらの口調も、更に言えば帝王に対する敬語も、使い易いから不便はない。
気をつけていれば相手を間違うこともないだろう。

依然として口ごもるドラコを俺のベッドに座らせ、話が切り出されるのを待つ。
十一歳だった頃の俺にこんな気遣いができただろうか。


「ブルー」
「ああ」
「ホグズミードに一緒に行かないか」
「え」


今度は俺が口ごもる番だった。
帝王のことは伏せて、保護者にサインを貰えなかったことだけを話せばいいのだろうか。
それはそれでマグルである叔母夫婦への怒りを静めるのが大変そうだ。

そういえば、シリウス・ブラックがいた。
あれは言い訳になりえるだろうか。


「悪いな、先生たちから止められてるんだ」
「は?」
「ほら、最近アズカバンから脱獄した例の奴の所為」
「お前も狙われてるのか……?」


肯定はしないが、苦笑はする。
仮にシリウス・ブラックが死喰い人だったとしたら、俺も標的になるだろう。
ルシウスさんは「ブルーは大丈夫」だとでも教えたのか。

そんなわけない。
俺なら帝王に瀕死の重傷を負わせた人間は家族ごと制裁する。


「パンジーを誘ったらどうだ?色々世話になってるんだから」
「ああ、そうだな。……あのヒッポグリフの時もお見舞いにきてくれたし」
「ちゃんとエスコートしろよ」
「わかってるさ」


(嗅覚鋭いコミュニティ性)

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