ぎゃくせつ

□33、折り紙
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ボガートが帝王に変身しようとしたのは、十中八九、俺を言葉で傷つけるためだ。
だが、帝王はそれを彼自身が恐怖の対象だと勘違いしてしまった。
どんな弁解も突っぱねて、俺が必死になっても拒絶される。

あの日以来帝王とは最低限の会話すらない。
そんな状況で、どうやって彼の役に立てばいいのだろう。

幾ら寝起きしても、彼の傷ついた顔が頭の中から消えないのだ。
神妙すぎる凍てついた声が耳から離れない。
心臓が圧迫される感触が忘れられない。

最近、頭と胃が痛む。

もちろん帝王のこともあるのだろう。
けれど少し前から蝕んでいたとすれば、間違いなく過多な授業時間のせいだ。
昔から噛み癖や自傷癖があったのだから今更な気もする。

今の状況はお世辞にも良いとは言えない。

無理な数の授業と、それに比例する膨大な宿題に追われる毎日。
クィディッチを辞めたとはいえ気が狂いそうだ。

二週間と少ししかたっていないが、ハーマイオニーも徐々にヒステリックになってきた。
俺はどうなのだろうか。
客観的に見た俺は正常だろうか。


「負けられない」


東塔の隠し部屋で、課題をしながらぽつりと呟く。


「いやだ。頑張らなくちゃ」


以前はハーマイオニーと共に図書館の隅で片付けていた。
それが、お互いにピリピリして精神衛生上よくないということで、現在は分かれている。
顔を合わせるのは授業の時くらいだ。


「負けてられない」


ソファに投げ出された杖を横目に見る。
守護霊の呪文も上手くいかない。


「……」


最近、行き詰まってばかりだ。
思いどおりにならない。
どうして状況はこうも悪くなるのだろう。


(精一杯の努力)

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