ぎゃくせつ

□32、ジェンガ
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新学期初日、俺は一人で朝食を取っていた。

ドラコと喧嘩をしたとか、教師に呼び出された先で食事をしているとかではない。
出会ってから約二年、ドラコと喧嘩らしい喧嘩をした覚えはない。
ましてや初日から教師に呼び出されるなんて以ての外だ。

ただ、いつものメンバーを寮に置いてきただけ。

たいていの場合、ドラコたちを起こすのは俺の役目だ。
別に俺が起こさなくても遅刻はしないだろうが、その時にはすでに俺は食事を終えている。
計画的に置いてきた。

もちろんそれには理由がある。
しかも俺の独断では放棄できない理由だ。

スリザリンのテーブルで朝食を済ませ、配られた時間割を手に取った。
九時から変身術と魔法史、そしてマグル学がある。
ドラコたちには見られたくない内容だ。


「おはよう、ブルー」


席を立つと同時に、セドが話しかけてきた。
せっかくなので予定を変更してハッフルパフのテーブルに向かう。
ドラコと会うのが久しぶりなら、彼と会うのもまた久しぶりだ。


「おはようセド。少し見ない間にまた背が高くなったな」
「ブルーこそ、身長のびたね」
「俺も育ち盛りだから。栄養とか考えて食べてるし」


十三歳ということは、そろそろ変声期もくるのだろう。


「今日はドラコたちと一緒じゃないんだ」
「まあ……仲良くなりたい子がいて」
「ドラコが文句を言いそうな?」
「十中八九、確実に怒るだろうな」


彼女を思い出して苦笑する。
どんな反応をするかは予測できないが、長く嫌味を言われることは確かだ。


「好きな子?」
「いや、それはないな。友達になりたいだけ」


そろそろ迎えに行かなくてはならない。
セドに別れを告げて、俺はグリフィンドール寮のテーブルに近付いた。

端の方に赤毛、栗毛、黒髪の頭が並んでいる。
ハグリッドと話していたが、もう終わったらしい。
優等生らしい笑みを浮かべて口を開いた。


「ミス・グレンジャー、ちょっといいかな?」


(スケアクロウ)

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