ぎゃくせつ

□31、おいでなさい
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九と四分の三番線ホームで周りを見回して、深い溜め息を吐いた。
ルシウスさんたちが見つからない……。

俺は新学期の荷物の準備、制服の新調などをルシウスさんに全て任せている。
グリンゴッツの鍵は預けてあるし、俺には帝王を探すという名分があるからだ。
もちろん後者はルシウスさんを丸め込むための嘘だが。

つまり、俺は彼に会わなければ荷物が手に入らない。
ルシウスさんのことだから大丈夫だとは思うが、不安は残る。


『放っておけ、汽車が出る』


右目の中から帝王に急かされ、渋々汽車に乗った。
乗って早々、通路で立ち話をしている生徒を見て眉をしかめる。
この混みようではドラコを見つけるどころか席を探すことすら難しそうだ。

俺は通路の奥まで進み、突き当たりの手すりに体を預けた。
ざっと見たところコンパートメントに空きはなかったし、ドラコもいなかった。
ハリーを構いに行っているのかもしれない。

そういえば、俺の特別措置の件はどうなったのだろう。
ふくろう便すらきていない。


「揺れますね、座席のありがたさが身に沁みる……」
『さあ?俺様は関係ないからな』


暗くなってきた空を傍目に苦笑した。
ずるずると床に座り込み、眼帯を外した右目を強くこする。


『っ……!』
「え、痛いんですか?」


どうやら痛いらしい。

新しい発見に口元だけで笑っていた時だった。
汽車の速度が少しずつ落ちてきた。
確かに出発して大分時間がたっているが、まだホグワーツには着かない筈だ。


「うわっ」


もしもの時のために座って衝撃に備えるべきか迷っていると、一斉に車内の明かりが落ちた。
すかさず立ち上がり通路の奥の闇に杖を向ける。

俺が今使える魔法は呼び寄せ呪文と全身金縛り呪文だけだ。
対人用ならいける。

だが、周りの冷気を考えると魔法生物というところが妥当だろう。
その予想を肯定するように、闇の向こうから薄汚いマントが近付いてくるのが見えた。

リドルの館に迷い込んできたあいつ等は帝王が追い払ってくれた。
俺がキスされなかったのはブラックのお陰だ。
今度は、助っ人はいない。


「ディメンター……」


帝王の指導の元、最大限の努力はしたが、俺の守護霊はまだ完璧とはほど遠い。


(絶体絶命?)

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