ぎゃくせつ

□30、ビー玉
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犬は、リドルの館内の浴室に連れ込んで洗ってやった。
白くなることはなかったが、少なくとも綺麗にはなった。
黄ばんだ歯も磨いてやろう。

バスタオルに包まってソファに座る犬を見て感嘆した。
少し手を加えただけなのに見違えるほど立派になっている。


「うん、名前どうしようか」


汚れの落ちた凛々しい顔立ちの犬なら飼うことにも異論はない。
帝王とソファでくつろいでいる様は、絵に描いたように似合うのだろう。


「くぅん」
「魔法界の偉人にちなんでつけようか」
「わん」
「けど、お前を拾ったのは帝王だしなあ」
「……うぅぅ」
『風呂はすんだのか』


そう言って帝王が部屋に入ってきた途端、犬が飛び上がった。
飛びかかりそうな勢いで威嚇している。


『躾がなっていないな』
「洗っている間は良い子でしたよ」
『ほう、良い子が俺様に威嚇しているぞ?』
「いつか慣れますよ」


帝王の赤い瞳が舐めるように犬を見る。
その犬は、今にも帝王を喰い殺そうとしているかのように睨んでいる。
正に一触即発だ。


『……そうだな、ブラックにするか』
「ブラック?」
『下手にマーリンなどと付けるより、余程似合っているとは思わないか』
「そうですね、いいと思います。なあ、ブラック」


犬――ブラックの黒い体がビクリと跳ねた。


(大きな犬)

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