ぎゃくせつ

□27、吹き戻し
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「担当の癒者から聞いたよ、記憶がないそうだね」


ハリーたちを帰した後、ダンブルドアは静かに言った。
円いイスに腰掛ける彼を俺は黙って見据える。
首を振って肯定の意を示した。


「喪失したのは秘密の部屋の継承者に関することだけだと思います」
「そう。日常の記憶の所々にも穴があるとか」
「推論に過ぎませんが、事件の前からなんらかの形で接触していたのではないでしょうか」
「推論だなんてとんでもない、わしもそう考えていた」
「誘拐されたのもそれが理由かもしれません。現にジニーには利用目的があったのでしょう?」
「ブルー、自分には利用するだけの価値がないと言っているのかね」
「確かに俺を餌にすればハリーは絶対に行動に移す――けれど、ジニーだけで充分です」
「君は本当に賢く……そして悲しいまでに自虐的じゃな」
「俺にハリーや人柱ほどの価値があるとお思いですか」


自分のことをまるで第三者について考察するように語る。
それはとても奇妙なもので、おかしくなりそうだった。

けれど、狂わない。
ダンブルドアが近くにいるせいで、帝王が些細なアクションもとれない以上は。
俺はもっと頑張らなければならない。


「先生、継承者について教えていただけませんか」


自虐的な雰囲気は隠さずに尋ねる。
今の俺は可哀相な子供だ。


「それはできない相談じゃ」
「どうしてですか」
「心の傷を広げるやもしれん」


鳥肌が立った。
心って、心なんて!
それは俺にしてみれば、帝王にとっての“愛”と大差ない。

母親は俺を守ってはくれなかった。
確かに愛されていたのに、死の間際に心に思い描いたのはハリーだった。

だから俺は――。


「ではハリーに訊きます」
「ブルー」
「弟ならすんなりと教えてくれるでしょう」
「……本当に、強かな子だ」


勝った。


(吐き気)

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