ぎゃくせつ

□23、神経衰弱
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好きかもしれない。
ぼんやりとそう自覚すればポロポロと確証が現れる。

吊り橋理論だとか、錯誤帰属だとか。
そんな陳腐で脆い勘違いなんかじゃない。
勉強を教えて欲しいと通いつめた理由がこれだ。

意識すればするほど……。
私情とは云え、どうして俺は逃げていたのか。

ただ、何か漠然とした引っ掛かりだけがある。


「ブルー……」
「はいっ」


満面の笑みでそれに応える。
……先輩の表情は曇っていた。


「せん……」


待て、よ。
どうして先輩が俺の名前を知ってるんだ?
だってこの人はハリーだと勘違いしてて……。

勘違い?
十月から今までずっと?

そんなに長い間、間違えるものか?
しかも、学校という限られた空間の中で。
本当はそうじゃなくて?

いや、違う、そうじゃない、違う、違う、違う。
俺は甘んじて?違う、それは、違くて!だって先輩は!

――俺を騙してた?

違う違う違う違う!!
だってそんなこと何のために俺は何がそうじゃなくって。
先輩は俺の何がいやいや!いや!

俺は、なんで……?


「ブルー、馬鹿な奴、出来損ない、八方美人、妬み屋、落ちこぼれ、人の痛みも分からない奴」


罵詈雑言の雨は茫然としたままの俺に容赦なく降り注ぐ。
歪められた帝王と似た顔は、俺を蔑んでいた。
嫌いだと疎ましいと近寄るなと。


「Petrificus Totalus」


俺に全身金縛りをかけ、リドル先輩は笑う。
帝王に教えてもらったポイントを全て押さえた優等生の笑みだ。

そうか、もう遅いけど……。
リドル先輩がスリザリンの継承者?
――帝王の記憶?


(ゲシュタルト崩壊)

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