ぎゃくせつ

□22、ひとりかくれんぼ
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僕は彼が好きだ。
愛しくて愛しくて仕方がない。

その少し長い黒髪に触れたい。
片方だけしかない緑の瞳が可愛らしい。
発育不良で成長が狂ってしまった体に僅かな、親近感。

ガサガサに荒れた唇さえ啄みたくなる。
胸の内の秘密を貪る事を夢に見る。

記憶の分際で。
自虐的な僕が嘲笑う。
けど、好きなものは好き。

僕が他人を愛しく想うのは罪ではない。
罰を受ける必要はない。

勉強の途中で寝てしまった彼に微笑みかける。
此処は図書室のなかでも人気がないから、そのままにしておけるだろう。
闇の帝王も今はいない。

もし。
彼を誘拐しようとしたら。

今なら容易にできる。
ジニーに盗ませた杖だってあるのだから。
麻痺させて、否、眠らせた方が怖い思いをさせなくて済む。

肝が据わっているようでいて繊細な彼。
少し力を込めれば縊ることさえできてしまう。

だから。
もう嫌な思いをさせないように、ストレスを感じさせないために。
秘密の部屋に閉じ込めてしまいたい。

そこに君に劣等感を感じさせる弟はいない。
君を追う勉強もなにもかも……。

ただ、僕と君と毒蛇の王がいるだけ。
一生笑って暮らして泣くこともない平坦な精神の平穏。
退屈しても僕が楽しませてあげる。

だから、ねぇ……。


「君は僕が好きなんだろう?ブルー」


(僕と、闇の帝王が)

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