ぎゃくせつ

□21、双六
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素晴らしい朝がきた。
雲ひとつない快晴で、爽やかな微風が吹いている。
果たしてこれは厭味だろうか。

今日はグリフィンドールの優勝がかかったクィディッチの試合がある。
我ら蛇の住まう寮は悪天候の中での“泥”試合を期待していた。

何故今日という日に限って快晴なのだろう、この国は。

だが、対戦相手のハッフルパフにかける手もある。
セドのシーカーとしての素質と戦法は天才と言っても差し支えない。
噂では、卒業後に彼をスカウトする予定のチームが列をなしているとか。


「見てろ、ポッターめ。ディゴリーに平伏せ」
「過激だな、ドラコ」
「当たり前だ!ブルーだって腹の底では同じなんだろう?」
「ああ。やってくれるさ、セドなら」


彼なら、継承者に石にでもされない限り勝つだろう。
来年のキャプテン候補だ。

俺とドラコはクィディッチスタジアムの最前列を陣取った。
此処なら、セドがハリーを負かす様を見物できる。
要するに過去を水に流したのだ。


『ブルー』
はい、帝王。


いったいなんだろう。
雰囲気から、彼が顔をしかめていることが分かる。

昨日の夕方から今まで、帝王は外出してない。
夕方以前に継承者の手がかりを掴んでいたら帰って来た時に言うだろう。
つまり、話題はそれ以外。


『この試合は中止だ』
「え?」


思わず声が漏れた。


「どうした」
「ぁ、いや、ドラコ。忘れ物をした気がして、な」
「お前にしては珍しいな。疲れてるんじゃないか?」


中止。
それはどういうことだ。

以前のようにブラッジャーが暴走し、今度は試合中止ということか。
だが本当にそうなら帝王が知っているのは変だ。
いや、もしかして……!


「皆さん!できるだけ急いで寮の談話室へ!!」


困惑する俺の脳内にマクゴナガル先生の声が響く。
観客席から下を見れば、先生が巨大なメガホンで叫んでいた。

熱狂の嵐に包まれていたスタジアム内は水を打ったように静まる。


「早く!」


波のように引いていた音が、打ち寄せてきた。
叫ぶ、怒鳴る、喚く、金切り声をあげて、泣いて鳴いて啼いて。
驚くべき事に全員がどういう事態かを理解していた。


「スリザリンの継承者っ……」


俺のすぐ横で誰かが頷いた。


(そんな錯覚)

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