ぎゃくせつ

□18、水風船
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冬も近づき空気は鋭い冷気を帯びていく。
一週間前にグリフィンドールの一年生が襲われた事件さえ遠い昔のようだ。
継承者の調査さえできるなら犠牲者の事なんてどうだっていい。

朝、食事を求めて玄関ホールまで行くと、小さな人だかりが出来ていた。
どうやら掲示板にプリントが張り出されているらしい。

なんの告知だろう。
くだらない行事かもしれないが、重大な事件かもしれない。
事実がどちらににせよ、確かめなければ。


「ちょっと、なにが書いてあるか分かる?」


手近の女子生徒に尋ねた。
彼女は頬をほんのりと桃色に染めて俺の名前を呼ぶ。

だから俺は男子に敵が多いんだ。
ゲイは嫌だけど、男にも好かれるようにもっと頑張らなければ。
そうでないと本物の優等生にはなれない。


「ねえ、聞いてる?」
「へ?え、えぇ、もちろん!」
「君が何を考えてたのかも気になるけど、俺の質問の答えも気になるな」
「あのねブルー、ロックハート先生主催の決闘クラブがあるの」


それから彼女と少し雑談して、俺は今度こそ朝食を取りに大広間に向かう。
途中でドラコたちと合流、決闘クラブについて盛り上がった。

ロックハート先生が主催者ということもあり、興味を示す者は少なくない。
何せあの問題教師だ。次は何をするのかと冷やかしが大量に続出する。
大きな事件が起きそうで頭が痛い。

それなのにドラコたちは参加すると云う。
友人の誘いを蔑ろにはできず、もちろん俺も強制参加だ。

決闘クラブは今夜開催。
スリザリン生の大半が出席するらしい。
目当てはロックハート先生の“手伝い”をするスネイプ教授だろう。

それにしても、あのスネイプ教授を手伝い扱いするとは。
いったいロックハート先生はどこまで勇敢なのだろう。


帝王、せっかくですし笑いに行くのもいいかもしれませんね。


授業中。
教師が出した問題を解き終えた俺は帝王に話しかけた。
隣でドラコが必死に頑張っているのがなんだか微笑ましい。


息抜きも大事ですよ。
『ブルー、残念だが俺様は行かぬ』
え。


鈍器で頭を殴られたような衝撃が走った。
まさか、こんな滑稽で愉快な見世物を帝王が断るなんて。


『帰りは深夜になる』


俺は浮かれてたのかもしれない。
帝王に直接寄生されるようになって、彼の特別になれたと。
馬鹿みたいに思い上がっていたんだ。

でなければここまでショックを受ける筈がない。
恋する乙女じゃあるまいし。


(一緒に行きたかった)

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