ぎゃくせつ

□16、子増やし鬼
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ウィーズリーの双子とフリントたちの取っ組み合いを、唖然として眺めた。
さっきまでは言葉だけで暴力にまでは発展していなかったのに。
同寮生として、頭が痛い。

俺がフーチ先生を呼びに行っている間に何があった。
それを訊くことすら今は難しそうだ。

フーチ先生が杖を取り出し、暴れている生徒を鎮めた。
……鎮めたというには生徒の顔に苦痛の色が浮かんでいる。
まあ、自業自得か。

先生は野次馬から事の経緯を聞き溜め息を吐いた。
吐きたいのは俺なのに。

競技場の壁にもたれながら額を押さえる。
それでも締め付けるような痛みは治まらず、辟易した。
苛立ちに拍車がかかる。

このまま倒れたらどうなるだろうか。
あまりの頭痛にそう思ったが、すぐに打ち消す。


『此処で倒れたところで新たな騒ぎが起こるだけだ』
分かってますよ!


去年だけでも三回以上は医務室に入院している。
十月も終わらないうちに倒れたらただの問題児だ。
気を引きたがる子供じゃあるまいし。


『子供じゃあるまいし、か』
なにか?
『十二歳はまだ充分子供だというのが俺様の見解だが?』
子供……。


そうか、帝王は俺を子供と見ているのか。
少し寂しいような気がする。


『だが、気味が悪いくらいに大人びている』


その一言は記憶の彼方にある思い出を深く抉った。
これと云った痛みはないが、胸の水槽に不快感が満たされる。
お守り代わりの金装飾のロケットを服越しに握り締めた。

帝王との会話を打ち切り、そちらに向けていた意識を現実に引き戻す。
湿った草の匂いが鼻腔をくすぐった。


「いいでしょう」


スリザリン側の言い訳を聞いていた先生が呟くように漏らす。
呆れが混ざった声音になにを勘違いしたのか、ドラコたちの顔が明るくなった。


「午前はグリフィンドール、午後はスリザリンが競技場を使いなさい」


途端、グリフィンドールとスリザリンが文句を言い始めた。
一斉に大声で喚くので場が騒々しくなる。

私的には練習ができれば午前だろうが午後だろうが構わない。
それより、文句を言い過ぎて練習自体を止めさせられる方が問題だ。
早くメンバーを説得してしまおう。


(妥協を)

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