ぎゃくせつ

□11、積み木
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退院祝いの寮内パーティ、クィディッチの決勝戦、学年末の宴。
ここ数週間であった行事を挙げれば切りがない。
どれも、俺と帝王を酷く疲れさせた。

特に学年末の宴。
本当はスリザリンが寮対抗杯を手に入れるはずだったそれ。

だが、老いぼれことダンブルドアの所為で寮杯はグリフィンドールへ。
我らが蛇の住まう寮は七年連続の優勝を逃してしまった。
……愚弟とその御学友どもの御蔭で……。

ドラコがトランクに教科書を投げ入れるのを見、溜め息を吐く。
先程終わった宴が余程腹立たしかったのだろう。

確かに集計後の駆け込み点はフェアじゃない。
ドラコより愛寮精神がない俺でもそう思うのだから相当だ。
――相当、ハリーを英雄に仕立て上げたいと見える。


「ドラコ、埃が立つ」
「構うもんかっ!」


こちらも相当。
その気持ちは分からないでもないが、俺にしてみれば堪らない。

今夜もこの部屋で過ごすのに。
埃が立ったベッドなんかで寝たくはない。
やっと蜘蛛の巣だらけの物置から解放されたんだ。

けど……まぁ、ストレスを溜め込むのは体にも精神にも悪い。
後で屋敷しもべ妖精を呼ぶことにして、今は放っておくのも良いか。


「そんなに嫌な顔をするな!」
「してない」


確かに埃に対する嫌悪感は表情に出ているかもしれない。
だが、ドラコが怒鳴るような恐い顔をしてるつもりは毛頭ない。
もちろん、ただの少しも。


『ブルー』


頭の真ん中で帝王の声がした。
自然と背筋が伸びる。


『自覚がないとは困り者だな』
また考えを読んだんですか!?


帝王が右目に寄生してからというもの思考を読まれる頻度が増した。
防ぐ為には閉心術を完璧に習得しなければならない。

習得しても脳内で会話はできるらしいが……。
ついつい声に出しそうになる。

閉心術をものにする前に、この状況に慣れなければ。
以前との共通項はたくさんあるからそう難しいことではない。
お仕置きと称した右目への痛みも変わらずに与えられるし。


『夏休み中に表情のコントロールを覚えろ』
……はい。
『それと、閉心術もだ』
…………はい。


イエスと答える他ない。
俺は帝王を恐れているのだから。


「ドラコ、もう遅い、俺は寝る」


明日になれば夏休み。
きっと勉強するべき事も増えてハードなスケジュールになるだろう。
考えるだけで憂鬱だと、俺は左手首を噛んだ。


(イエス・マイ・ロード)

 

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