ぎゃくせつ

□9、輪回し
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新学期開始二日前に、俺たちはホグワーツに戻った。
首にはクリスマスプレゼントで貰った金装飾のロケットを提げている。

ルシウスさんたちとは九と四分の三番線ホームで別れた。
このロケットはその時に「いつも着けていなさい」と言われている。
少し重いが服の下に隠せば問題ない。

本を詰め込んだ所為で重くなったバッグを肩に掛ける。
問題があるとすればこの鞄だろう。

ホグワーツ城に着いて、俺は真っ直ぐスリザリン寮に向かった。
腰巾着をさげたドラコはハリーに喧嘩を吹っ掛けている。
なにも人気者を敵に回さなくてもいいものを。

汚れどころか埃ひとつない自室のベッドに鞄を放り投げる。
スプリングと腕が悲鳴を上げた。


「……ぁ」


そうだ、本。
鞄から半分飛び出していた古い本を見て思い出す。
図書室に返さなくては。

この本は予習の為に、司書に頼み込んで貸してもらったもの。
折り目や汚れをつけないことは当然、返却日を守ることもまた然り。

一年も経ってないのに信用を失うような事はしたくない。
本を小脇に抱えた俺はすぐに図書室に向かった。

だが、こういう時に限って災難は訪れるものらしい。
俺のローブの裾を掴んでいるハリーを見て思った。
本当に、タイミングの悪い愚弟だ。

夕方までに本を返さなければならないのに。
苛々する。


「兄さん、マルフォイの家に行ってたんだね」
「うん。とても楽しかったよ」
「クリスマス?」
「ああ。プレゼントありがとう、嬉しかった」


おそらく、通販だろう。
緑の石が付いたチープな髪留めを貰った。
一応、勉強する時は活用させて貰っている。


「でも、マルフォイからも貰ったんだよね」
「……友達だからね」


拗ねた子供のような言動に頭が痛くなる。
できるだけ早く解放してくれるように図ろうか。


「イースター休暇はホグワーツに残るよ」
「うん、ならいいんだ」


なにが言いたい。
ハリーが俺に依存気味なことは周知の事実だが……。
休暇以前もこんなに病んでいただろうか。

利用できるようならしたい。
……が、あまり近寄りたくないという生理的嫌悪もある。

もう少し様子を見よう。
できるなら帝王の意思も仰いだ方がいい。
“保存用の匣”以外に利用できるならそれに越したことはないし。

けど。
嫌な予感がする。


(薄気味悪い弟)

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