ぎゃくせつ

□6、島鬼
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決闘する場所は四階のトロフィー室。
そこに着くまで、俺は生きた心地がしなかった。

スクイブの管理人とその猫に見つかるのを危惧しているのだ。
または巡回中のスネイプ先生やパーシー・ウィーズリーも怖い。
夜中にベッドを抜け出すなんて、愚の骨頂。

窓から差し込む月光を道標に、俺とハリーたちは走る。
ネビルが俺に近付きたがらないのは気のせいではないだろう。


「……防衛本能?」


ぽつりと呟いてみた。

この足音の所為で消えてしまっただろうが。
少なくとも俺自身には聞こえた。

さて。何故、夜のホグワーツを脇目も振らずに全力疾走しているのか。
ドラコにハメられたからだ。おそらくは、ハリーとロナルドが。
何か適当なことを言ってフィルチを呼んだのだろう。

ピーブズには見つかるし、誘いに乗らなければ良かった。

挙句の果てには地獄を見ることになって。
――頭が三つもある、黒くて、巨大な犬だった。


「ケルベロス……!」


三頭犬が吼えると同時に俺たちは走り出した。
途中で分かれて医務室へと辿り着いても脳内で鳴る警報は止まない。
勢い余ってベッドに突っ伏した。

額を枕に擦りつけ、乱れた息を直そうと深呼吸する。
鼓膜の奥で激しく打つ脈の音が聞こえた。


「ハァ……ハァ……ァ……な、にか……ハァ……」


なにか、守ってる?

あの犬は足の下に扉を隠していた。
思えばあそこは四階の立ち入り禁止の廊下じゃないか。
かなり厄介かもしれない。

凶暴な三頭犬に守らせるほどの代物なんて賢者の石だけ。
少なくともこの学校内ではそうだろう。

だから問題なのだ。
魔法界のケルベロスはマグルの神話で語られているものほど甘くない。
来る者去る者、見境なく噛み殺す。

とりあえず明日、帝王に報告しなければ。


(功績をあげなければ)

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