ぎゃくせつ

□2、達磨さんが転んだ
2ページ/6ページ



箒の店、望遠鏡の店。
こんなどこにでもありそうな店から、内臓を売ってる店まである。
魔法界というのは本当になんでもありらしい。

叔父さんや叔母さんが嫌うのも無理ないのかもしれない。
ハリーたちから数歩離れて歩きつつそう思った。

ふと、薬屋のショーウインドーに映る自分に足を止めた。
顔の右半分、医療用の眼帯に隠された位置を指で押し付ける様に撫でる。

痛い。
ハリー“が”闇の帝王を退けた際に潰れた目玉。
この痛みの割に合うものを俺は手に入れられたか?

もし、スクイブだと広まったら。

果たしてホグワーツに入学することはできるのだろうか。
まさか、取り消しなんてことにはならないよな……?


「兄さん?」


俺が立ち止まっているのに気付いたハリーが遥か前方から戻って来た。
わざわざ大人たちの犇めく隙間を縫って、迷ってしまうかもしれないのに。
出来た弟だと思う。

そうだ、妬ましいなんて思うべきじゃない。
俺が兄でハリーが弟なのだから守ってやるのは当然だ。

兄の方が優れていて、自分より劣っている弟を守ってやる。
そうすることが良い兄の見本――つまり俺。
守らなくては。

だけど、本当に?

このままでいいのか?

ずっと英雄の付属品みたいな存在でいいのか?

嫌だ。
やっぱり妬ましい。
ハリーが嫌いだ。

けど、けど。


「兄さん?」
「なに、ハリー」


妬ましい。
けど、これはどうにもならない事だ。


「迎えに来てくれてありがとう。さ、行こうか」


優しい兄を演じる。
悪足掻きしたってどうせ無駄。
弟を嫌ってはいけない。


(自尊心を忘れて)

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ