ぎゃくせつ

□5、お絵描き
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夢と現を行き来する早朝。
最近忙しい生活を続けていた為、俺はこの時間に起きるようになった。
普通に寝ていれば快適な眠りを満喫できるのに。

こうなるともう寝付けず、昨日のうちに鞄に詰め込んでいた教科書を一冊だけ手に取った。
予習は基本だと、帝王も言っていた。

手に取った教科書は魔法薬学。
この科目はマグルにも出来そうでいて、実はかなり困難だ。
途中で杖を振る工程がある。

ただ、料理ができれば難しいとは思わないだろう。
包丁で刻んで鍋で煮て……大差ない。

ベッドに腰掛け、教科書の表紙を捲った。

――そういえば。
俺がスクイブだという噂は、飽くまでも“噂”で留まっているらしい。
昨夜、色々な生徒と話して判明した。

“生き残った英雄を憎む元死喰い人が流した噂。
スクイブと蔑まれる兄と、兄とは双子の間柄である弟が苦しむことが目的”

以上が噂に対する噂だ。
主に、俺がスクイブだという風説とセットでついてくる。
前述の軽蔑を後述の憐憫で洗い流している。

誰がその“偽の噂”の源泉か……気になるところだ。
大穴でハグリッドか、王道に帝王の指示を受けたルシウスさんか。

それか――。


「ブルー、早いな」


同室のドラコが起きたらしい。
マルフォイ邸で一ヵ月過ごしたが、こんなに早かったことはない。
もしかして、彼は枕が代わると快眠できない人種なのだろうか。

冷たい水で満たされたコップを渡した。
本当なら、ここは金持ちらしく眠気覚ましの紅茶か。

それから、二人分の制服をクローゼットから引っ張り出す。
まだ寝惚けているドラコに片方を渡し、自分はさっさと着替えた。
寝癖は濡らした手でなんとかした。


「ドラコ、早くしろ」
「分かってる……」


本当に分かっているのだろうか。
そう思わせる動きでドラコは着替え始めた。


「最初の授業はなんだ」
「ああ、変身術」
「グリフィンドールの寮監か」


やっと頭が覚醒してきたドラコの問いに答える。
心なしか着替えの速度も上がってきた。


「マッチを針に、ねぇ」


不機嫌そうなドラコに苦笑いを返す。
子供扱いされたと思ったのか、眉間のシワが少し増えた。
確かに子供扱いしてる節がある。


「ドラコ、早くしないと」


こうやって促すのも、子供扱いしているせい。
本人からしてみれば不愉快だろう。

けど、ドラコは俺の中で友人というより弟のような位置にある。
手間がかからなくて、自立した弟。
結構理想的だ。


(理想の弟)

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