ぎゃくせつ

□23、神経衰弱
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――僕が好きなんだろう?
――過去の僕も未来の俺様も愛してくれる。

俺自身でさえ自覚していなかった恋愛感情を、リドル先輩は知っていた。
帝王もそうだろう。
同一人物である二人に全く同じ感情を向けていることも。

だから嫌われた。

――人の痛みも分からないクズ。
なんてことだ。

きっと酷く傷付けた。
先輩は、帝王と同一の人物であっても同一の個体ではないのに。

俺が悪い。
全て俺が悪い。
ドラコを守れなかったのも先輩が傷付いたのも全て。

だっておれはミセス・ノリスをみすてて……。


「……反応がないな、気絶でもした?」


金縛りは解かれた。
それでも俺は自由を許されていない。
鳩尾を蹴り上げられる。

右腕の骨は粉砕呪文で砕かれたし、左腕は切り裂き呪文で深く抉られた。
何度も腹部を蹴られたせいで内臓は傷付いているだろう。


「はっ……あ゙ぁっ、はっ……はっ」


血を吐いた。
彼に嫌われた。
帝王も俺が嫌いなのだろうか。

嫌いに決まってる。
彼は“愛”が嫌いだから。


「もし、本体より僕の方が良くなったら、助けてあげる」
「っ!?」
「――って、言おうと思ってたんだけどね」


淡々とした冷たい声。
先輩はとても酷薄な笑みを浮かべていた。
帝王に……彼の未来である人物にそっくりの笑みだ。


「無理だ、やっぱり」


そう言って、帝王の記憶は俺の唇に噛み付いた。


(全部目茶苦茶だ)

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