□偽りで染める私
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清々しすぎるくらい気持ちの良い朝。
カーテン越しに白い光が射し込む。

少し乱れたベッドに、男女ふたりの姿はあった。
男は体を起こすと、まだ横になっている女に問いかけた。

「どうだった? 俺に抱かれんのは」

「前よりかは良かったかな」

「…前?」

「あ、前の男よりってこと」

「てか、お前がこんなヤツだったとは思わなかった」

呆れたような、面白いものを見つけたような、どちらか分からぬ表情で男は笑う。

「どういうこと?」

「好きでもねぇ男と寝るヤツってことでさァ」

「人は外見じゃ分かんないってことよ」

「本当、お前は特に」

「それに、大学生なんだし少しは遊びたくなるものでしょ?」

「フッ…まぁな。結構俺とお前、体の相性良かったよな」

「ははっ、そんなに良かった?」

「もっとヤりがいのある男が他にたくさんいるって事ですかィ?」

探るような瞳と口元に笑顔を浮かべ、彼は問う。


「あぁーそうかも」

そんな事ないのに、また嘘を嘘で固めてしまう。

「誰にでも股開く、軽い女ってところか」

「言い方、悪いよ」

「本当の事だろ?」


全然、本当じゃない、本当じゃないのに
小さな嘘がこのような偽装の私を作ってしまった。


「あなたは違うの?」

「何が?」

「私と寝たのはどういう心境で?」

「別に、ここ1週間くらいしてなかったし」

「…おんなじくらい軽いじゃん。沖田くんも」


悲しくて仕方が無いのに何故か私の口からは笑顔が零れてゆく。

抱かれたいなんて思わなければ良かった。

そう思わなければきっと、もっと、楽だったのに。


「お互い様っつーところだな」

「そうだね、お互い様」



















君だけが好きなのに、
(好きだと伝えるのが怖かった)

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