空白昼夢
□落ちた涙は空色
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第十一話
ー 落ちた涙は空色 ー
『と、隠し事はなくなった訳ですがー』
ザラザラと、まるでビーズをかき集めてるみたいな音が響く中。
『あ!別に隠し事してた訳でもないんだけど!何て言うか…、その、』
私は小恥ずかしい気持ちと罪悪感でいっぱいで。
『ごめんなー、…石、とか』
大量に落ちた涙は、床の至る所に散らばっていて、それを集めるだけで一苦労だってのに。夏目の服の中やら、夏目の至る所までに入ってしまった。そりゃ、あんなに密着してたから…。申し訳ない。
「いや、大丈夫…!」
『そ、そうか?』
明らかに何か言いた気だ…!そして夏目が立ち上がると、ザラザラザラー、と一気に石が床に落ちた。
『ああー!本っ当、ごめん!!』
「気にしてないから!」
床に散らばる石を集めてると、ふと思った。
こんな山みたいになるまで、涙が落ちたんだな…。前は泣きたくても泣けなかったのに。
積み重なった石…。
『…ありがとう、夏目』
「え?」
『スッキリ、したよ』
全部、吐き出せて。落とせて。
***
「あら貴志くん、出掛けてたの?」
あれから家に帰ると、塔子さんが少し驚いたような顔をした。
そう言えば、急いでたから言えてなかったな…。
「ちょっと…。すいません、言えなくて」
「いいのよ。もうすぐご飯だからね」
はい、と短く返事をすると塔子さんは優しく頬笑んでくれた。
「帰ったのか、夏目」
部屋に戻ると、先生がいた。ヒノエ達は…もう帰ったのか。
「ただいま。…珍しく着いて来なかったんだな、先生」
いつもは着いて来るのに。
すると先生は鼻を鳴らした。
「ふん。何でもいいだろう」
「まさか、気を使って?」
「お前と莱空に気を使う程、お前達は偉いのか?」
「…先生が気を使う、って考えた俺が馬鹿だったよ」
だけど、先生も先生なりに莱空が好きなんだろう。ヒノエ達も、俺も、皆…。
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