空白昼夢

□落ちた涙は空色
1ページ/2ページ





   第十一話
    ー 落ちた涙は空色 ー




『と、隠し事はなくなった訳ですがー』


ザラザラと、まるでビーズをかき集めてるみたいな音が響く中。


『あ!別に隠し事してた訳でもないんだけど!何て言うか…、その、』

私は小恥ずかしい気持ちと罪悪感でいっぱいで。


『ごめんなー、…石、とか』


大量に落ちた涙は、床の至る所に散らばっていて、それを集めるだけで一苦労だってのに。夏目の服の中やら、夏目の至る所までに入ってしまった。そりゃ、あんなに密着してたから…。申し訳ない。



「いや、大丈夫…!」

『そ、そうか?』


明らかに何か言いた気だ…!そして夏目が立ち上がると、ザラザラザラー、と一気に石が床に落ちた。


『ああー!本っ当、ごめん!!』

「気にしてないから!」



床に散らばる石を集めてると、ふと思った。

こんな山みたいになるまで、涙が落ちたんだな…。前は泣きたくても泣けなかったのに。
積み重なった石…。



『…ありがとう、夏目』

「え?」


『スッキリ、したよ』



全部、吐き出せて。落とせて。





***





「あら貴志くん、出掛けてたの?」


あれから家に帰ると、塔子さんが少し驚いたような顔をした。

そう言えば、急いでたから言えてなかったな…。


「ちょっと…。すいません、言えなくて」

「いいのよ。もうすぐご飯だからね」


はい、と短く返事をすると塔子さんは優しく頬笑んでくれた。




「帰ったのか、夏目」


部屋に戻ると、先生がいた。ヒノエ達は…もう帰ったのか。



「ただいま。…珍しく着いて来なかったんだな、先生」

いつもは着いて来るのに。
すると先生は鼻を鳴らした。


「ふん。何でもいいだろう」

「まさか、気を使って?」

「お前と莱空に気を使う程、お前達は偉いのか?」

「…先生が気を使う、って考えた俺が馬鹿だったよ」


だけど、先生も先生なりに莱空が好きなんだろう。ヒノエ達も、俺も、皆…。





_
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ