点と線で恋。
□今世紀最大の奇跡
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それからはすっっごく忙しかった。
本っっ当、今日は客が多いな。さっきまで出勤してなかったから(サボり)気づかなかったけど、確かに男客が多い。
『…いらっしゃいませ!』
に、しても疲れる!
顔が引きつってきたし、人数数えるのも面倒だし、くたくただ。
はぁ、とため息をつき、ふと辺りを見渡した。
キッチンにはまひるがデザートとか作ってる。ホールにはぽぷらが小さい体で走り回ってて、杏子さんも珍しくちゃんとレジやってるな。
佐藤さんは相変わらず真面目にやってるけど、見るからに不機嫌!そんなにホールが嫌なんだ、面白い!
相馬さんはっと……
「お兄ちゃん!バイバイ!」
「バイバイ、また来てねー」
店を出る小さい子に振られた手を、相馬さんも振り替えしてる。
普段の胡散臭い笑顔と違って、本当に優しい笑顔。
へー、あんな顔もするんだ。
…何か意外だな。と言うか想像出来ないだけかな。
『…………』
いつも見てる相馬さんと、今日見た相馬さんは違ってて。私の知らない相馬さんは、まだまだいっぱいあるんだろうな…。
…あんまり知りたくないけど。
って、何ぼんやり突っ立ってんだ!仕事しなきゃだ!皆頑張ってんのに!
バチン!ともう一発、思いっきりビンタして気合を入れ直した。
うっし、私も頑張るぞ!
***
に、しても今日は本当に忙しいなぁ。しかもホールって結構疲れるんだよねー…。
だけどまぁ面白いからいいけど。
例えばほら、佐藤くんなんか不機嫌すぎて見てるこっちが面白い。そんなに嫌だったんだね、照れちゃって。
あと真城さんはっと…
『ありがとうございました!』
不意にも驚いた。
作り笑いが苦手だと言ってたけど、上手く笑えてるし言葉使いだって出来てる。接客もオーダーも完璧。皿も割りかけてはいたけど、まだ一枚も割ってない。
「あれ…、本当に真城さんなんでしょうか?」
「本当、あえりじゃないみたい…!頑張ってる!」
「そうだねー」
山田さんも種島さんも、そんな真城さんを信じ難いみたいだった。
確かに意外にも責任感があってやる時はやれる子、だとは言ったけど。
…正直俺も、あそこまで出来るなんて思ってもみなかった。
いつも予想とは違う彼女。本当、真城さんは飽きないよね。
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