点と線で恋。

□今世紀最大の奇跡
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それから休憩室からは叫び声やうめき声やら、何か酷い音まで聞こえてきた。
ホールからも、良からぬ声や音が響き、少なからず真城さんの頑張りが伝わる。

かなり頑張ってるみたいだね、真城さん。


さて、いつまで続くのかな。







『ギブ!ギブアアーップ』



キッチンに倒れ込む真城さん。
ギブするまではそう時間はかからなかった。ほんの30分。真城さんにしては保った方だね。


『けど頑張った!』

「あぁ頑張ってたな。だが俺らの仕事が増えた。なんでだろうな」


真城さんは確かに頑張ってた。だけど皿を割るのは当たり前で、逆に周りの仕事を増やしていた真城さん。


『ほんと、何でだろうね』

「お前の所為だろーが」

『えぇっ!何で!』


「まぁ頑張ってたけどね。だけど小鳥遊くんもいないし、今はほとんど種島さん1人で大変そうだね」

『今日客多いもんねー』


ちょっと嫌味に言ったんだけど、やっぱり真城さんは気づかない様子。まぁこんなので気付く訳ないとは分かってたけどね。


そしてあまりの馬鹿さに佐藤くんが真城さんの首を軽くしめてた。




「あ、電話だ」


その時、伊波さんからの着信。

佐藤くんと真城さんが揉めてる中、俺は携帯を手に取る。




「え、お客さんが立て続けに?」

″「しかも男性客ばっかりで…!種島さん一人じゃ接客追いつかなくて…」″


ホールに視線を向けると、やっぱり種島さんが走り回ってた。


″「そ、それで…キッチンの方で接客とかできませんか…?」″

「無理。接客嫌い」

何時の間にか揉め終わって話しを聞いていた佐藤くんが言った。
真城さんは…、息を切らして倒れ込んでる。話しは聞こえてるみたいだけど。



「勇気を出してお前が頑張れー、伊波ー」


すると電話の向こうで物凄い音が聞こえてきた。


″「おっ、お願いします…!」″


「(今のはお願いというより…)」

「(脅し、だな…)」



一旦電話を切りため息をつく。





「…そう言えば、真城どこ行った?」


何時の間にかキッチンからいなくなっていた真城さんに気づいた佐藤くん。


「電話の途中、自分に思いっきりビンタしてまた飛び出していったよ」

「ビンタ…。あいつ、また仕事増やすんじゃ」



どうかな。さっきの真城さんの様子じゃ、そんなことしないと思うけどなー。
意外と責任感も強いし、今度こそ頑張ってくれるのかもね。


本当、今日はいつもと違って面白くなりそうだよ。





 ***




自分に思いっきりビンタして、勢いよくキッチンを飛び出した。

ぽぷらは一人で、まひるは男恐怖症なのに頑張ってる。
それなのに私ってやつは!今こそ力を発揮しないでどうする!私!



と、ここで全員集合がかかった。




「と、いうわけで」

「俺らが接客もやるんで、」


どうやら担当をちょこっと訂正するらしい。



「伊波は伝票やらデザートやらできる事をやれ。後泣くな」

「はい…!」

「店長はレジ。種島は頑張れ」

「私頑張るよ!」


仕切る佐藤さん。
相馬さんと佐藤さんはキッチンからホールをするらしい。まひるはキッチン、ぽぷらは頑張って…



「真城は特に頑張れ。死ぬ気でやれ。わかったな」

『はぁい』

「期待はしてないが期待してるぞ」

『おうとも!』



あれ、勢いで答えたけど今の佐藤さんの日本語おかしかったような…。気のせいだよな、きっと。私は佐藤さんを信じるよ。


と言う訳で皆が仕事に取り掛かり始めた。
私も動いこうと休憩室を出ようとすると、頭に違和感。



「俺も期待してるよ、真城さん」


相馬さんの清々しい声が頭上からふりかかった。

軽く私の頭を撫でている相馬さんの表情はどこか楽しげ。…何楽しんでるんだろ?





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