イミテーション模様
□回りゆく事態
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「な、なんか……新鮮ですね…」
キドの『目を隠す』能力で、『目を奪う』モモちゃんの能力は無効化されている。普段注目されて仕方ないモモちゃんからしたら新鮮なのだろう。
ドキドキしてる様子のモモちゃん。マリーは人がいっぱいで今にも意識が飛んでしまいそうだ。
そしていきなりモモちゃんは私に飛びついてきた。思わず『うおふっ』と変な声が出てしまったのはスルーで。にしてもモモちゃんの目が輝いている。
『ど、どうしたの、モモちゃん…。まさか私に変な気を起こしたんじゃ…いくら見えなくたってここ一応街中だし、さ』
「ち、違います!確かにリヴさんは綺麗でドキドキしますけど違いますから!」
あ、予想外の返事。ドキドキはしちゃうんだ。
「あ、あの…そのストラップ…」
ワナワナと震えて指を指すその先は、私がついこの前手に入れた「ベニ鮭ちゃんストラップ」だ。確かバイト先でもらったやつ。
「えっ、なになに?リヴこんな趣味だったっけ!」
カノがそれを見るなし、面白そうに笑ってきた。
『全然趣味じゃないけど。バイト先の先輩にもらったからつけた。モモちゃん好きなの?』
「あ、実はこれが欲しくて出てきたんですけど、その…」
ああ、人の目を集めちゃって無理だったのか。「いいなぁ」と小さく呟いたモモちゃんに、私はそのストラップを渡した。
*
まさか私が欲しかったベニ鮭ちゃんストラップを、リヴさんが持ってるなんて…。やっぱり可愛い…!と思っていたら、リヴさんが私に手渡してきた。
「え…、いいんですか…」
『うん。私はいらないし。って言うかそれを付けたモモちゃんが見たいし、私からのプレゼント』
あ、顔がものすごく笑顔だ。絶対楽しんでる。だけど嬉しいものはすごく嬉しかった。「ありがとうございます!!」と言うとリヴさんはニッコリと笑った。
「リヴさんってギャップありますよね…」
思わず心の声が口にもれてしまった。リヴさんは一瞬目をパチクリさせた。
『え?そんなに?』
「何て言うか…、見た目はすごく綺麗で大人っぽいのにやることが意外と子供と言うか変わってるって言うか…」
そう言うとリヴさんは笑顔のまま固まってしまった。それと同時にカノさんが吹き出し笑っている。あれ!?私なにか変なこと言った!?
「で、でも完璧ですよね!動きに無駄がないみたいな。カノさんが固まった時の泣く演技はすごかったですし、騙されました」
『あぁ、だよね。完璧すぎて困るよ』
……え?
あぁ、やっぱりリヴさんは少し変わってる。改めてそう思った。
だけどそう言ったリヴさんの顔は少し寂しげで、笑顔だけど。どこかそんな気がした。
『世の中ちょっと抜けてる方が可愛いよ。モモちゃんみたいに。ああ、ちょっとじゃなくても!』
またいつもの調子にもどったリヴさん。気のせいだったのだろうか。
「リヴも十分抜けてるけどね。なんたって子供っぽいし変わってるんだからさ!…くくっ」
『な…!』
カノさんはよく人をいびるが、それにリヴさんは動じていなかった。ここも凄いと思うところで、逆に反撃しに出る。しかもお互い笑顔で。見てるこっちが怖い。
しかしなんと意外なところで折れてしまったリヴさん。かと思いきや私に視線を変えて一瞬面白そうな表情を浮かべた。『抜けてて子供なモモちゃんに、抜けてて子供で変人って言われちゃったよ…』なんてショックそうにしてるけど実は私に対するからかいだと思う。
「着いたぞ」
キドさんがそう言うと、目の前にいつ見ても巨大なデパートの姿が現れた。
「マリーちゃん!もうデパート見えたよ!」
「わ…ほんとだ!絵本のお城みたい!」
マリーちゃんがワクワクしてるのが伝わる。何回も見てる私でもこの豪華なデパートには驚くほどで、初めて見るマリーちゃんにはもっと凄いものに見えるんだろう。
入り口に差し掛かったところ。
そこで見慣れた人物が立っていたのに気付いた。
「お兄ちゃん……!?」
( 事態はまた新たに回り出す )
嘘だ。ありえない。