イミテーション模様
□初めの始めの第一歩
1ページ/1ページ
私はただ、想像しただけなんだ。
それがいつの間にか創造になり。
彼女は、全てを自分のものにしてしまった。
*
「あ、そうそう、今日帰ってくるらしいよ」
カノさんが思い出したかのように指を立てた。その顔は楽しそうに笑っていた。その話を聞いたキドさんも軽く笑っただけだが嬉しさが伝わる。
「そうか。リヴが帰ってくるのか。久しぶりだな」
「いや〜、今日は新人さんが入ったことだし丁度顔合わせできるね」
私は今日、アイドルを辞めてメカメカ団に入ることになった。この人から注目される体質を治せる…あぁ、こんなにドキドキするのは生まれて初めてだ。
他の団員さん達も、私と同じで何だかの体質を持った人ばかりらしい。まだ団長さんとカノさんとマリーちゃんにしか会ってないけど。マリーちゃんは今お茶を入れに逃げてしまったし。今二人が話題にしているリヴさんと言う人が来るのだろうか。
「あの…リヴさんって…」
「あぁ、何か知らないけど旅に出ててね。今日帰ってくるんだ」
「はぁ、旅ですか…。……え、は、旅?」
「そ、旅。すごく面白い子なんだけどさ!」
「早いとこ紹介しておきたいんだが…」
はぁ…旅、旅って…。どんな人なんだろう。旅ってどこに行くんだろう。変わった人なんだろうか。何か、憧れるな。
そう胸を高鳴らせていると、アジトのドアが音を立てて開いた。
「噂をすればだな」
「いやぁ、おかえり、リヴ」
ドアから入ってきた人は、何と言うか…とても綺麗な人だった。うわぁ、大人っぽい…!
『ただいま、キド。と、あれ?新人さん?』
「はっ、初めまして!如月桃っていいます、16歳でしゅっ」
…う、うわぁあぁあぁああ!!噛んじゃった!あんまりにも綺麗だから緊張して…!
恥ずかしい、穴があったら入りたい。きっと優しそうな人だから大丈夫だろうけど…
『プ…ッ!くっくっくっ…』
え?
『ちょ、モモちゃん最高!アイドルが噛んじゃ駄目だよねっ。ポスターも半目だったりしてたしさ!いやぁ、私モモちゃんの大ファンだったんだよ』
今のでどこが褒めてもらえたのだろうか。話の結論が違い過ぎませんか。
目にうっすら涙を溜めながら小さく笑うリヴさん。しばらく笑いが続き、一段落したのか息をはいた。
『いやいや、久しぶりだね、キド。これはまた楽しい子を連れてきてくれて嬉しいよ』
「あぁ、何と言うか…手違いでな。それよりリヴも元気そうで安心した」
「ちょ、ねぇ、さっきから僕のことシカトしてない?久々の再会なのに酷くない?ねぇリヴ」
『あぁ、カノ。いたんだ。てっきり捨てられてるのかと』
「捨て…!?へぇ…?リヴのツンデレも見れたのも久しぶりだね。そろそろデレを見せてくれてもいいのにー」
『いつかデレが来るなんて思ってる時点で間違いだよ』
「心外だなぁ」
「な、なんかあの二人笑顔で喧嘩してませんか…?」
「安心しろ。ずっとこうだ」
へ、へぇ。仲悪いのかな…。
と言うかリヴさんのギャップにびっくりした…。色んな意味で…。
「お、お茶お待たせし……!あれっ、リヴ…!?う、うわぁっ!!」
すると丁度お茶を持ってきてくれたマリーちゃんの方向から、お茶が降ってきた。相当な量の液体がバシャッと頭に降り注ぐ。あまりの出来事に、今日何度目かの叫び声が室に響いた。慌てたマリーちゃんは、今度は全く絞られていないびしょ濡れの布が頭に直撃した。ポタポタと髪を慕って垂れる液体。
ただ無言で周りを見ると、
「ごっ、ごめ…」
今にも泣き出してしまいそうなマリーちゃん。
『「〜〜〜っっ!!」』
こんな状況でも二人でクスクスと笑っているカノさんにリヴさん。
「…はぁ」
困ったような表情を浮かべるキドさん。
あぁ……困っちゃうなぁ。
でもなんか、どうでもいいや。
こんな気持ち、久しぶりな気がする。
「私、メカクシ団で頑張ります!」
( 初めの始めの第一歩 )
これが始まり。