Growth Record
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『ね、ごめん。ちょっとどいて』
別に気にしてる訳じゃない。
ビクッと体を跳ね上がらせた女子グループは、声の聞こえてきた方に視線を下げ背後にいた私に気付く。呆気なく退いてくれ、私はその中を通り自分の席へとついた。
「…誰あれ?」
「ほら紀伊地芽繰!」
「目つけられたら家庭潰されるって…」
「に、してもさぁ……」
「「「「背小さっ」」」」
別に気にしてない、んだげど…!!
嘘、やっぱり気にしてる。この身長。人よりちょっと、ほんのちょーっと小さいだけで!自分はチビじゃない…!
無性に泣きたくなったから(別に背のことで悲しくなった訳じゃない、ただ目に髪の毛かお菓子か何かが入っただけで背の事じゃない)屋上へ行くことにした。
こんな授業開始ギリギリの時間なら誰もいないだろう。そこなら人目も気にせず、ゆっくりできる。
『ゔゔ…はあああ〜…!!』
隅に座り込み丸くなる。
『…疲れた。』
かれこれ結構経つ学校生活に、未だ馴染めずにいる自分。…それもそのはずなんだけど。
教室にいる時も、廊下を歩いている時も自分は注目を浴びた。軽蔑するような。それが疲れないって言ったら嘘になる、と言うか疲れる。
深くため息をつき、目を閉じ俯いた。
「何してるんだ、こんなところで」
すると頭上から降ってきたのは見知らぬ声。
ゆっくりと顔をあげると、赤髪の男が立っていた。…え、誰。そう聞こうとした時だ。
『だ、「マジで人だったのか。ボールかと思ったぜ」『なっ…』
赤い髪の人以外にもう一人、ガン黒が現れたその男が言った。ボール?何だ、ボールって。自分のこと?そう思っていたら、「だから言っただろ、人だって」「だって丁度丸かったしボールサイズに見えたんだよ」なんて失礼なことを話している。
『……うっざ』
「ああ?」
『誰がボールだよ!ボールに見えたなら眼科に行くことを進めるいい眼科を紹介してやる!!行ってこい!』
ガバッと立ち上がり、そう怒鳴るとガン黒は眉をピクリと釣り上げこめかみに血管が浮かび上がった。
「俺は昔っから目はいいんだよバァーカ。つーかやっぱお前サイズ小せぇじゃねぇかよ!」
『黙れ!!錯覚だ、錯覚!』
お互いに目から火花が散り、ジリジリと睨み合う。何なんだ、こいつ。超ムカつく。うざい。
「落ち着け、二人とも」
『「落ち着けるか!!」』
「まず青峰。お前は先に戻れ、もう授業が始まる」
赤髪にそう言われるとガン黒は舌打ちをしながら屋上から出て行った。最後の最後で「チビ」と言い残し…
『〜〜っ!!』
「そうカッとなるな。苛立つと脳の細胞が働かなくなって伸びるものも伸びない」
『…………』
何も言い返せなかったのが悔しい。自分で言うのも何だけど、結構口は強いほうだと思うのに。
「紀伊地芽繰さんだよね。授業サボるのか?」
『…何で自分の名前知ってんの』
「お前のことを知らないほうが珍しい」
ああそっか。そうだよね。
『いい、今日はもうサボり』
「へえ、君みたいな子もサボったりするんだ」
『……あんたも早く行かないと遅刻するよ』
「赤司」
『…は、』
「赤司征十郎だ。じゃあ、またな」
そう言って、赤髪…赤司征十郎と名乗りすぐに屋上から出ていった。……何だったんだろ。
ただ「またね」と言われるのが少しだけ、ほんの少しだけ嬉しかったりした。
(150せんちの出会い)