点と線で恋。
□風が目にしみただけ
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風が目にしみただけ
短距離を全力で走ったら長距離よりも疲れると思う。そんなことを思い知らされた私は息もきれてる訳で。
『…バカなの?』
どんな大怪我かと思えば…
『捻挫って…!?捻挫って何!?子供か!』
後から小鳥遊君に聞いた話。まひるに殴られて、その時に足を挫いたそうだ。…ダサッ。
…もっと大怪我かと思った。まぁ捻挫の酷いやつらしい。
でも何だ、良かった。もっと酷い怪我ならどうしようかと思った。ひとまず安心、本当に良かった。
『良か…「勝手に大怪我だって決めつけて飛んできたのはあえりちゃんでしょ?勝手に決めつけて勝手に馬鹿扱いしないでよ」
前外撤回。(よし、難しい言葉使ってやった)
『心配して損した…!!』
「そう、良かったね」
『良くない!私の善意返せコラ』
何が良かっただよ。全然良くないんだけど!?本当に、私の善意返してほしい。くそう、相馬さんの野郎め…。
………あれ、前みたいに戻れてる。
「さてと…。帰るのにも一苦労だよね、これ。じゃ、またね」
ニコリと笑ってみせた相馬さんに、少し心臓が痛くなった。…やめるって言ったのに。駄目だな、私。
『相馬さん』
「ん?」
『…仕方ないから送ってってあげる。店の自転車借りるし』
「……え、」
『一回1万で』
「えぇっ!?」
***
「何か、カッコ悪いねー…」
『何が?』
「男が後ろに乗るの」
ああ、これか。確かに後ろに男が乗ってたら様にならないよね。だけど足を怪我してるんじゃ仕方ない我慢してほしい。自転車を漕ぎながら、今後ろで相馬さんが恥ずかしい思いをしているのだろうと考えると、何だか面白かった。
『今に始まったことじゃないじゃん』
「……まぁ、そうだね」
…やけに大人しいな、相馬さん。
そんなに後ろが恥ずかしいのか?
無言のまま、私は自転車を漕ぎ続けた。
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