道化師ノスタルジック

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色んな動物に、それを扱うマジシャン。サーカスと言う、煌びやかな光景が目の前に広がった。そしてその中にいたピエロ。私が一番印象に残ったのは、あの笑顔なピエロだった。


彼は笑っていた。
馬鹿にされても、貶されても。

それでも笑っていた。

一粒、小さな涙を浮かべながらも、笑っていた。



あの小さな涙が、笑顔に隠された本当の気持ちなんだと思う。



私は…
私は、笑えてるだろうか。


…あれ、私は誰だっけ。


「…ろ……、…」


…違う、オレ。オレは誰…?



「……て、…」



オレはーー…







「「ハーイ、お目覚めー?」」

『……』

「て言うか、何で屋上で寝てんのさ」
「こんな時間に。今授業中だよ」

『……るさ、』


重たそうに瞼をゆっくりとあける一人の人物。ゴシゴシと荒く目をこするW彼Wは眩しい光に慣れ始めた視界に入ったのは…



『…………だれ』



同じ顔が並んだ双子だった。



「「最初にこっちが聞いたんだけどー」」

「それに、人に名前を聞く時は」
「自分から名乗るのが礼儀じゃない?」

『………』


理不尽な双子な双子の言葉に黙り込む彼。最初に聞いたのは言わずもがな双子だった為、そちらから名乗るべきだろう。


『…えっと〜、それより今授業中なんだよね。何であんた達はここにいんの』

「それもコッチが聞きたいんだけど」
「まぁ強いて言えばサボり」


後に「僕らはサボったくらいで怒られないし成績もかなりいい方だから何も言われないしネー」と付け足された。



『そっか!じゃ、オレはこれで帰「「らせる訳ないじゃん」」


目に見えてこの場を早く去ろうとするも、それは双子によって行き場を失った。


「僕たちは質問に答えたんだから」

「お前も答えてくんない?」


その口実をつくるために答えたのか、双子はしてやったり顔。しかし彼にとっては聞き流した回答、どうでもいい事だった。


『えー、やだ』

「「……、ハ?」」



双子の表情がガラリと歪む。
思いっきり歪んだ顔をみせた双子達はきっと心底意味が分からない気持ちでいっぱいだろう。


『そんじゃ!オレは帰らせてもらいます』


寝転がっていた体をゆっくりと起こし、双子の一人の肩をポンと叩いた。



『さよなら、常陸院弟サン』


「「………」」




『くくっ。冗談。常陸院兄』







授業が始まる少し前。

ふと窓の外を見ると、屋上に人影をみつけた。


…何やってるんだろ。もう授業始まるのに。少し気になってソイツを見ていると、足を屋上からブラリと出し、バランスを崩したら落ちる体制になった。



ちょ、本当何してる!?一歩間違えたらあの世行きだぞ!?


「「センセー!ちょっと急用でーす!」」


馨もその光景を見ていたらしく、僕と馨は授業を抜け出し屋上に向った。



勢い良く屋上の扉を開けると、ど真ん中に大の字で寝ている男を見つけた。… ちょっと拍子抜けた。なーんだ、死ぬつもりなかったんじゃん。焦って損した気分。



ーーだけど何だコイツ。

長いまつ毛が揺れ、寝顔だけでも女みたいな顔立ち。ハルヒみたいに女だったりして。…なんて、そんな訳ない。そんなことが二度もあってたまるか。



目を覚ましたソイツは男の僕らでも一瞬、見惚れるような容姿。それに加え自由気楽な感じで。


「さよなら、常陸院弟さん」


そう僕の肩を叩かれた。


ーー…また、か。また僕らの見分けがつかない奴だ。知ったかするなよ、と少しイラついた。

分かっている。僕らの見分けがつく人間なんていないって。



するとソイツは笑って、



「冗談。常陸院兄」


ピタリ。身体が止まった。… なんだ、今の。ただの当てずっぽう? にしてもこの違和感、ハルヒとは違う確信に近い言い草が引っかかった。


「「ちょっと待ってよ」」

『… なあに、』

その場を去ろうとするソイツに声をかけた。


「「おまえ、名前は?」」


咄嗟だった。するとソイツは目を丸く見開いて瞬きをした。… そんなに驚く事なんだろうか。


『… えー、なあに。オレの事気になるの』

「茶化さないでよねー」
「それに今の何。当てずっぽう?」

『さあて、どっちでしょーか』

「「…… 疑問系なの?ソレ」」


掴みどころがない奴だな。楽しそうに指を立て小首を傾げたソイツは思いついたように僕らに近づいた。


『… じゃあさ、ゲームしようか!あんたらゲーム好きだろ』

「「なんでそんな事知って…」」



『隠れんぼゲーム、なんてどうかな』

『見つけたら言う事なんでも聞いてあげる』



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… おまえは、勘で当てただけだろ?


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