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□シアワセパレード
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 ……呟きが夜の空気に溶けていった。
 雨はとうに止んでいたけれど、しっとりと濡れた空気のなか、決して少なくはない人ごみのなかで、ふたりで向かい合ってしゃがみこんで。
 翔太郎のコートの裾が地面についているのが目に入って、濡れなきゃいいけどと思った。
「綺麗なもん見せたかったんだよ。冬の花火綺麗だろ。フィリップ、夏のしか見たことなかっただろ、確か」
 ……あぁ、そうか。だから。
「……あぁ。エターナルのときの、あの花火だけだ」
「雨降ったからパレードも中止になっただろ。パレード綺麗なんだ。夜でクリスマスで、そういうの特に」
「……あぁ。きっと綺麗だろうね」
「だからさ」
「……うん」
 少しだけ、言葉を探した。
 でもいいんだと、そういう意味の。
 みんなでここに来れたことが、それだけで本当に満足なんだと、そういう意味の。
 君や亜樹ちゃんや照井竜が笑っていることが、それだけで本当に嬉しかった。
 あの、僕が消えてしまったことで、翔太郎が翔太郎らしく、亜樹ちゃんが亜樹ちゃんらしく、照井竜が照井竜らしく……それぞれがそれぞれのように在れなかった日々を思えば。
「……でも、いいんだ翔太郎」
 でもそういうことは、上手く言葉には出来ない。
「今日は綺麗なものをいっぱい観たし、楽しかったからいい。……花火観れなかったし、パレードも観れなかったけど。……また、観る機会もあるよ」
 そう言うと、やっと納得したように、そうだよな、と翔太郎が笑う。
「よっし飯食って帰るか!」
 勢いよく立ち上がって、そんな翔太郎を見上げた僕に手をさしだした。そのまま手を握って僕も立ち上がる。
「あ、フィリップ、裾濡れてねぇか?」
 自分の服の裾を見ながら、同じこと考えた、と思って少し可笑しくなる。
「大丈夫だよ、たぶん」
「だったらいい。よかった」

 微笑う。
 何メートルか向こうでも、ひどく楽しそうに、嬉しそうに微笑う亜樹ちゃんと照井竜がいるのが見えた。

 
 綺麗な花火も、綺麗なパレードも。
 綺麗な夜も、綺麗な景色も、……綺麗な世界も。
 相棒が、翔太郎がいるからだ。
 仲間がいるからだ。
 
 そう思える自分がとてもしあわせに思えた。
 ……とても、しあわせに。


Fin.


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