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□a Little Piece
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「フィリップ俺さぁ……俺」
 言ってしまおうか、それとも言わずにおこうか迷いながら俺はフィリップを振り返る。
 去年よりも今年は寒いとニュースで言っていた。確かに去年よりも雪が多いらしい。……今日も、クリスマスにふさわしく粉雪が舞っていた。
 夕闇に沈む風都タワーがフィリップの後ろに見える。
 風都タワーの煌びやかなイルミネーションが光る瞬間だけ、フィリップの表情が逆光で見えづらくなった。
「なんだい翔太郎?」
「んー……」
 迷う。
 フィリップの睫毛に雪。
「俺さ、お前がいなかった間、やっぱ死んでたわ」
 イルミネーションのタイミングに合わせて呟く。
 そんなことを伝える俺の顔を見られたくないんじゃなくて、そんなことを言われたフィリップの反応をはっきり知りたくなくて、タワーが光る瞬間に。
 光が落ちて、見えたのはフィリップの笑顔だった。
「なんだよそれ?」
 笑いの滲んだ声。
「なんとなくな!」
 子どものように肩をぶつけてきたフィリップに、照れ隠しのように声を張る。
「ケーキ気をつけろよ。亜樹子に怒られっぞ」
「わかってるよ」
 クリスマスケーキの箱を抱え直して、フィリップが口をとがらせた。
 俺は少し笑う。 
 ……今年は寒くないんだ。
 たとえ、世界中が氷に閉ざされたとしても、俺は。
 俺は寒くない。
 寒くないんだ。



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