短編
□あなたを追いかけ隊
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あたしには好きな人がいる。
なんて言うんだろう。彼を見るだけで胸がギューッとなって、心臓を取り出してもみもみしたい衝動に駆られる。
いっそのこと内臓引っ張り出して"Love you!"と並べたいとも思う。
それくらい好き。
でも彼は俗にいう不良で。
話しかけることすら、近づくこともできない。
しかも彼自身、人と群れるのは好きじゃないみたいで、近づいたら女だろうがなんだろうがブッ飛ばされると思う。
そう!あたしは好きな人は陰で見ることしかできない悲劇のヒロイン!!
× × ×
「なんです!」
「そう。で、だれが?」
「えぇ?話の流れで必然的にあたしに決まってるじゃないですかぁ」
「話の流れでいくと君は僕を影から見てるんじゃないの?」
「う、それは・・・」
あたしは言い返す言葉もなくて、応接室のやたらふかふかなソファーにドスンっと座った。
むぅっと膨れてみるけど雲雀さんは完全にあたしを蚊帳の外にしてせせっと書類作成。
ひどいぃ!
・・・でも仕事を一生懸命する雲雀さんが、あたしは好き。
書類を作成していく雲雀さんの手の動きを惚れぼれしながら見ていると、視線に耐えきれなくなったのか雲雀さんがこっちを睨んできた。
――キュン!
「や、やだ雲雀さんったら!そんなに見つめないでくださいよぅ!」
きゃーっと身をよじらせながら自分の体を抱くあたしに、雲雀さんは何故か呆れたような溜息をついた。
「なんなの君。意味のわからない発言ばっかするわりに、噛み殺そうとしてもありえない速さで逃げるし」
「え、ああ誤解しないでくださいね?あたしは雲雀さんに噛み殺されるのは本望なんでほんと昇天しちゃう勢いなんですけど、ほら、死んじゃったら上からしか雲雀さんを拝むことができないでしょ?あたしMなんで。ドMなんで。どちらかといえが好きな人に見下ろされたいなぁなんて思っちゃったりしちゃうわけですよ!・・・あ、でももし雲雀さんが見下ろされたい方の人ならあたしは喜んでSに転職しますけどハアハアハアハア((ryそうだ!今から玩具屋(大人の)で首輪とか鞭とか縄とかその他もろもろ買ってきます!!」
「待ちなよ」
応接室を飛び出そうとしたあたしの肩を、雲雀さんが目の下の陰を濃くしながら掴んで止めた。
なんでだろう、その顔には恐怖がにじみ出ている。
「大丈夫ですか?冷や汗の量が尋常じゃないですけど」
「・・・・・・」
ありゃ、今度はこめかみ押さえて半笑いで怖い顔してる。
ていうか、雲雀さんのこんな表情初めて見た!
「ちょ、写メっていいですか」
「止めて」
即答。
そんなに嫌がらなくてもいいのに。撮らせてくれるならお金払うのに。
まぁ、3ヶ月前から毎日欠かさず書いている『雲雀さんとあたしのラブラブメモリアルVv』(写真付き)は今日で2冊目に入ったんだけどね。アルバムは15冊目に入ってるしね。
そんなあたしの日々の愛も露知らず、雲雀さんはあたしの腕を離すと、重苦しいため息をついた。
「ほんとに君、なんなの」
「なにって・・・」
あなたが好きなんですよ
(不覚にも)(顔が熱くなった)
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『あなたに追いつき隊』に続く!